年明けから一般入試のシーズンになる。受験生のいる親は、子供にどう接すればいいのか。東大カルペ・ディエムに所属する教育ライターの新倉和花さんは「この時期の受験生は普段よりナイーブだ。東京大学理科三類に合格した人たちのインタビューを分析すると、親がやってはいけない言動や行動がわかった」という――。

※本稿は、東大カルペ・ディエム(著・編集)、西岡壱誠(監修)、じゅそうけん(監修)『東大理III 合格の秘訣 Vol.40 2025』(笠間書院)の一部を再編集したものです。

勉強している子供の手元
写真=iStock.com/taka4332
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冬休みの受験生は“いつもよりナイーブ”

冬休み。学校の授業が終わり、受験生はいよいよ本番直前の時期に差しかかります。家庭の空気も少しずつ張りつめ、子どもだけでなく、親御さんにとっても日毎に不安が大きくなってくる頃かもしれません。

この時期の受験生は、普段よりずっとずっとナイーブです。いつもなら受け流せるひと言が胸に刺さり、そこからメンタルのバランスを崩してしまうことも。だからこそ、親御さんは子供との接し方について、より一層の注意が必要になってくる時期でもあります。

私たちカルペ・ディエムでは、今年、日本の大学受験で最高峰とされる東京大学理科三類の合格者29人にインタビューを行いました〔東大カルペ・ディエム(著、編集)、西岡壱誠(監修)、じゅそうけん(監修)『東大理III 合格の秘訣 Vol.40 2025』(笠間書院)〕。

この『東大理III』シリーズは、その年の東大理3に合格された方々の受験体験記をまとめた書籍で、1986年の創刊から今年で第40号となります。

過去40年分の理3合格者、約1000人への膨大なインタビューを読み解いていくと、冬休み〜受験直前期の親御さんの言葉や行動が、受験生にとってプラスにもマイナスにも大きく作用していることがよくわかります。

本稿では、実際に『東大理III』に寄せられた合格者たちの声の中から、冬休み〜受験直前期に親御さんとの関わりによって苦悩したエピソードを3つのタイプに分けて紹介していきます。いずれも、親御さんとしては「よかれと思って」の言葉や行動ではあるのでしょうが、結果として受験生本人の心にはまったく別の形で届いてしまった例ばかりです。

「志望校を変えて」は“本人の否定”につながる

【タイプ1:志望校を変えるように働きかける】

最も多いのが、親御さんからの「志望校を変えよう」という働きかけによって心が折れてしまったパターンです。

模試の判定が思うように出ていない……。けれども、もう1年浪人することになれば、本人の精神的な負担はもちろん、家庭としての経済的・生活的な負担も小さくはない……。

私たちカルペ・ディエムは実際に多くの親御さんとお話をしてきましたが、みなさん不安を抱えていらっしゃいます。「浪人はさせたくない」「失敗してほしくない」と安全策を勧めてしまうのは、親御さんとしてごく当然の感情でしょうし、その思いやり自体はとても尊いものです。

しかし、多くの受験生にとって、志望校は単なる出願先ではなく、自分がここまで勉強を頑張ってきた意味そのものでもあります。それを否定されるということは、ただこれからの勉強のゴールを見失うというだけではなく、アイデンティティの否定にもつながりかねない深刻なことなのです。