付加価値税の減税に踏み切ったドイツ

ドイツは2026年の年明けより、苦境が続く飲食業界を支援するため、飲食店および仕出し店(ケータリング、デリバリー)によるサービスに適用されている付加価値税(VAT)を19%から7%に引き下げる。ただし、飲料には適用されない。単純に考えれば、この措置を通じて、年明けから飲食店や仕出し店による提供価格がおおよそ1割引き下がる。

ドイツの飲食店売上は、名目、つまり金額ベースだと、2023年頃よりほぼ横ばいで推移している(図表1)。対して、インフレの影響を除いた実質、つまり数量ベースだと、2022年の前半をピークに減少が続いており、コロナショック前の2019年を100とする指数で測ると、水準は実に80程度まで低下し、極めて厳しい状況である。

コロナショックによる影響を緩和するため、政府は2020年7月から同年12月まで、飲食店と仕出し店によるサービスにかかるVATを19%から5%に引き下げた。2021年1月から2023年12月までは7%に引き上げ、2024年より再び19%を適用したが、こうした措置は実質的な増税に相当すると、飲食店から非難の声が高まった。

2025年5月に就任したフリードリヒ・メルツ首相は、出来るだけ早い段階で飲食店と仕出し店によるサービスにかかるVATを、生活必需品や食料品に適用される軽減税率と同じ水準である7%まで引き下げる方針を示していた。日本でも消費減税や軽減税率の導入が叫ばれているが、ドイツのこの経験は良し悪し両面で示唆を与えよう。

2025年12月10日、ベルリン、フリードリヒ・メルツ連邦首相(CDU)が連邦首相府で記者会見を行う。
写真=dpa/時事通信フォト
2025年12月10日、ベルリン、フリードリヒ・メルツ連邦首相(CDU)が連邦首相府で記者会見を行う。