新入社員はまずキャベツ畑に

例えば、新入社員向けに行っているキャベツ農場研修はその代表だ。オタフクソースに新卒入社した社員は、4月下旬から5月頭にかけて、本社から40分ほどの位置にある畑で、文字通りキャベツと徹底的に向き合う。

「お好み焼は、ジャンルとしてはキャベツ料理なんです。その真髄を学ぶには、やはりキャベツと向き合うのが一番でしょう。

キャベツ農場研修では土作りに始まり、畝をつくって苗を植え、より良いキャベツを栽培するにはどんな条件が必要なのかを身をもって学んでいきます。6月に配属が決まった後も何回か本社に戻ってきてもらいながら、最終的には成果発表や試食会を行い、終了です」(佐々木社長)

畑でキャベツの収穫中
写真=iStock.com/okugawa
※写真はイメージです

その他、おいしいお好み焼を作るために使うべき豚バラ肉の厚みや、具材を重ねていく順番。さらに県下だけでも多岐にわたる種類があるというお好み焼の研究や、相性の良い食材など、お好み焼に関する情報はとことん集め、顧客に還元する。

メーカーにしかできないエビデンスを交えた活動や、社長自ら「誰よりもお好み焼を食べている自信がある」と語る姿勢が、最後発ながらシェアトップの座に輝く原動力となっている。

広島の会社なのに「関西風」で売る

Otafukuグループではお好み焼をひとつの文化として捉え、その文化を伝え、広げていく目的で1998年に「お好み焼課」なる部署も作った。現在は正社員だけで20人弱、パート・アルバイトなどまで含めると50人規模の大所帯だ。生活者向けの体験教室や、お好み焼店を開きたい人を対象とした研修を実施している。

お好み焼という文化を広げるために、対立を煽られがちな「関西風」「広島風」にもこだわらない。その姿勢が顕著に表れているのが、1998年に発売した「お好み焼こだわりセット」だ。

お好み焼は、広島や大阪で違うのはもちろん、同じ広島でも県内でいくつもの食べ方があるほどバリエーション豊かな食べ物だ。しかし、バラバラなままでは文化として広げていくのが難しい。また、粉や天かすに青のりなど、いくつもの商品を買うのが面倒だという消費者のニーズも見えていた。

そこで、最大公約数として、お好み焼に必要なものをそろえたセットを発売した。

「お好み焼こだわりセット」はじわじわと支持を広げ、今ではオタフクソースの単品別売上順位の3位に入る人気商品に。
撮影=プレジデントオンライン編集部
「お好み焼こだわりセット」はじわじわと支持を広げ、今ではオタフクソースの単品別売上順位の3位に入る人気商品に。

このとき、広島風お好み焼ではなく、あえて関西風のお好み焼のセットとしたことについて、佐々木社長は次のように話す。

「当時のキーワードは『超・広島』。なんだかんだいっても、世の中のお好み焼はほとんどが関西風ですから、広島にこだわらずやってみようと。とはいえ社内には『何で迎合しなきゃいけんの』という人もいたようですが(笑)」