仕事や私生活で予想外のことが起きたとき、どう対処すればよいのか。20年以上のキャリアをもつ映画監督の飯塚健氏は「映画撮影では予算や納期の縛りがあり、常に“臨機応変”が求められている。そのため、いつも“2つのこと”を考えている」という――。

※本稿は、飯塚健『晴れのシーンを撮る日に、雨が降ったら?』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。

ビデオカメラ
写真=iStock.com/Rowan Jordan
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晴れのシーンを撮る日に雨が降ったら

映画づくりの世界では、予想外のことがしばしば起きる。というより、予想外のことしか起きないくらいだ。

そもそも、予想通りにいかないのが人生というもの。想定外のことが起きたとき、どうリカバリーするか。私たちは、常に「臨機応変」の手腕が問われている。

大人ドロップ』という映画を撮ったときのこと。

これは、大人と子どものはざまで揺れる高校生たちを描いた青春映画で、撮影期間は約2週間。いわゆる「低予算」「短納期」の作品だった。

伊豆でのロケは、幸運なことに晴天がつづいて、撮影は順調だった。

ところが、あと2日で終わるというときに、季節外れのとんでもない台風がきてしまった。

残されたのは、映画のクライマックスである海辺のシーン。

本来なら、痛々しいほど晴れ上がった快晴の空の下で、主人公たちの永遠の別離を表現する重要な場面だった。

が、理想とは180度真逆の、大荒れの海になってしまった。

さあ、どうしよう?

私たちは撮影のために、砂浜に長いレールを用意していた。海辺を歩く主人公たちと並行してカメラが動き、ロングショットで心の機微を表現したかったからだ。

だが大雨と強風で砂が舞って、とてもではないがレールを敷ける状況ではなくなった。そればかりか強風の音で、リハーサルでさえ、俳優の芝居の声が聞こえない。

何もかもが想定外だった。

天気に文句を言うより、味方につける

だったら、最初から「このシーンには台風が必要だった」ように見せてしまえばいい。それが「臨機応変力」だ。

プロならば、口がさけても「このシーンは本当は快晴のはずだったから、俺がやりたいこととは違うんだよね」と言ってはいけない。やれない、できないは言い訳だ。

私は、急きょ現場で、演出プランを変更した。

カメラもレールではなくステディカム(ベストに付けるカメラ)に変更し、同じ長回しでも味わいを変えた。自由度が高いカメラに変えたことで、荒々しい動きをとらえることができるようにしたのだ。

すぐさまカメラマンを始め、スタッフと俳優陣に変更の指示を伝えた。

結果的にこのシーンは、「大荒れの海でよかった」という仕上がりになった。

というより、「大荒れの海でなければならない」というシーンになったのだ。

やりたいことがあったとして、湯水のようにお金が使えるとか、スケジュールにゆったりとした余裕があるとか、そんなことはほぼありえない。

クリエイティブで自由そうに見える映画の世界もまったく同じだ。前述の映画『大人ドロップ』にもいえる。