カウンセラーだけでは解決できない「子どもの問題」
つまり、スクールカウンセラーを置くところは多いけれども、本当に子どもの問題を解決しようと思ったら、子どもの話を聞いて「それはきついね、つらいね」と寄り添っているだけでは十分ではありません。
問題を抱えている子どもの場合、親が精神を病んでいたり、借金だらけになっていたり、地域とトラブルを抱えていたりすることも少なくない。そういう時に、心理職がハーブティーなんかを飲みながら、子どもの話を聞いたところで、もちろん子どもの心を解きほぐすというのもひとつ大切なアプローチだけれども、それだけでは解決につながらない場合もあります。
本当に解決しようとしたら、専門職によるチームアプローチが必要です。だから、トラブルや破産にはスクールロイヤー、親の精神障がいや生活保護であれば福祉職、そういう専門家チームの横のつながりがあって初めて、子どもの生活を救うことにつながるのです。本気で解決しようとしたら、専門職のチームアプローチが不可欠、というのが私の考えでした。
DV相談員を「年収700万」で募集
学校に限らず、市民の命と暮らしを守るために、市役所には専門家の働きを必要とする現場が数多くあります。だからこそ常識的な待遇をもってしかるべき部署にしかるべき専門職を配置すべきなのです。
例えば、DV(ドメスティック・バイオレンス)問題の相談員。2024年5月に可決・成立した共同親権がいずれ施行されますが、この制度によって加害者との接触が絶てなくなるではないかといったDV被害者の不安は大きく、今後は支援体制のさらなる拡充が急がれます。
DV相談員は極めて責任の重い仕事なのですが、私が明石市長になった2011年当時は国の基準においても年収300万円に満たないような条件で採用されていました。その多くが非正規雇用でした。そのような不安定な待遇で、深刻かつ難しい案件に対応する人材を集めようということ自体がそもそもおかしいのです。
そこで、明石市では、正規職員で年収700万円という待遇でDV相談員を全国公募することにしました。全国の相談所に、明石市の募集要項を送付したのです。
「うちの職員を引き抜く気か」と激怒して電話をかけてきた市長も何人かいましたが、私は「引き抜きなんかしていません。案内を送っているだけです。文句を言うだけでなく、そちらも待遇改善を検討してみてはどうでしょう」とお返事しました。

