容赦ないリストラや倒産の嵐が吹き荒れる中、元外資系金融マンや起業家を夫に持つ妻たちの生活に異変が起きている。そんな「リーマンショック妻」の内情を取材した。

「元リーマン妻がモンスターワイフ化している!」

そんな噂が、外資系金融業界で囁かれている。例えば、かつてリーマンで働いていたことがあり、昨年、別の外資系投資銀行をリストラされたA氏(30代後半)の妻。港区の外国人向け高級マンションに住んでいたが、会社契約だったため、リストラと同時に中央区・月島に移った。

しかし、元キャビンアテンダントの妻は、いまだに買い物は広尾の明治屋か青山の紀ノ国屋、美容院は港区。子供はアメリカンスクール受験用のセレブ幼稚園に通い続け、妻の母親の生活費までA氏が毎月送金させられているという。

「まだ次の職が決まらないから、もう本当にお金がないよ」

A氏がそう嘆いても、妻は月々の家計の要求金額を絶対に譲ろうとはしない。

リストラされた元外資系社員Bさんの妻は、夫の就職先が決まらなくても、「自分が働くつもりはまったくありません」という。
リストラされた元外資系社員Bさんの妻は、夫の就職先が決まらなくても、「自分が働くつもりはまったくありません」という。

別の金融機関に勤めるB氏(40代)も同じ時期にリストラされた。高級マンションの家賃と妻の父親の高級老人ホームの支払いに悲鳴をあげている。私立校に通う子供二人の学費もバカにならない。しかし、専業主婦の妻は、「働くつもりはまったくない」という。

稼げなくなった夫に対して、日々の生活レベルを頑として下げない元セレブ妻たちは、まさにモンスターである。45歳以上でリストラされた場合、次の職が見つからない夫が多い。本当に一文なしになったら、モンスターワイフたちは躊躇なく夫に「家庭からのリストラ」を突きつけるだろう。こんな家庭の特徴は、「金の切れ目が縁の切れ目」。仕事の忙しさを理由に夫婦関係の構築を怠った結果、夫婦を唯一つなぎとめるものが「お金」になってしまっているのだ。午前様にも浮気にも寛大な妻ほど危ない。

「数千万のお給料をとっていた人でも、外資系金融マンの懐は結構厳しいです」

年俸4500万円の外資系金融の職を昨年5月に失ったササキ氏(仮名、45歳)は語る。何回もの転職やリストラを潜り抜けてきた歴戦の金融マンだが、今回のリーマンショックは勝手が違った。

「計算外だったのは収入の一部だったストックオプションがゼロになってしまったこと。何千万円かが紙切れです」

不動産投資をしている人も多く、ササキ氏も3000万円程度の賃貸用物件2戸を所有している。彼の場合は借り手がいるからいいが、持ちきれなくなった賃貸用物件を手放す外資マンが相次いでいるらしく、不動産屋からは「半額でどうですか?」と毎日セールスの電話があるという。(文中仮名)

(尾関裕士=撮影)