忠誠心を植え付ける戸籍という装置

では、明治の日本が近代化を推し進める一方で、それとは逆行するかに思える「家」にこだわった理由とは何か。

まず、日本が「近代国家」として存立していくにあたり、「国民」の境界線を明確にすることが不可欠であった。そして国民一人一人が国家に対する忠誠――それはまた天皇に対する忠誠であった――を重んじるように教化せねばならない。