離婚したあと、子どもの戸籍はどうなるのか。政治学者の遠藤正敬さんは「離婚した母子の戸籍を同じにするには非常に煩雑な手続きが必要になる。それは同じ姓でなければ同じ戸籍には入れないという原則が残っているからだ」という。――(第3回)

※本稿は、遠藤正敬『戸籍の日本史』(インターナショナル新書)の一部を再編集したものです。

離婚届
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両親が離婚したらタラちゃんはどうなるのか

夫婦が離婚する時に第一に考えなければならないのが子どもの存在である。離婚すると子どもの戸籍はどうなるのか?

では、サザエ・マスオ夫妻が何らかの事情で離婚したと仮定しよう(マスオの性格上、DVや不倫に及ぶことは考えにくいが)。

離婚すればサザエは元の戸籍、すなわち父親の磯野波平を筆頭とする戸籍に復籍することになる。それにより彼女はフグ田姓から磯野姓に戻る。かくしてサザエはフグ田の戸籍から抜けるわけだが、もともと実家の磯野家で暮らしているので、サザエの生活の場は変わらない。磯野家を去るのはマスオの方であろう。

タラちゃんはサザエが引き取ると思われるが、その際、タラちゃんの戸籍や姓はどうなるのか。

答えは「親が離婚しても子どもの戸籍も姓も変動がない」ということである。戸籍は「氏」すなわち「家」を構成原理としているので、子はいったん一つの戸籍に収まり、一つの氏を得たら、親が離婚しようとも自分の氏(姓)を変えない限り、戸籍は親のどちらかを筆頭者(戦前では戸主)とするそれに登録されたままである。

タラちゃんは生まれた時から父・マスオを筆頭者とする戸籍に入っているので、離婚後に母・サザエが引き取ったとしても、タラちゃんはマスオの戸籍に残ったままである。もちろん、姓名も変わらず「フグ田タラオ」である。

タラちゃんがこれを意に介さなければ別に問題はないが、ここが戸籍の七面倒しちめんどうなところである。

磯野タラオになるには

サザエが離婚後、タラちゃんを「磯野家」の一員として育てていくのであれば、タラちゃんの姓をフグ田から磯野に変更する必要がある。

この手続きがまた面倒である。具体的には、まず家庭裁判所に「子の氏の変更許可」を申し立てる。ここでの申し立て人は子になるが、15歳未満であれば法定代理人が引き受ける。当然、タラちゃんもこのケースになる。法定代理人とはこの場合、タラちゃんの親権者(ここでは離婚後単独親権=後述=の時代での出来事とする)、つまりサザエになる。

家裁から氏変更の許可が下りたら、タラちゃんが母サザエの戸籍に入籍する届出(これを「入籍届」というが、「入籍」という言葉から婚姻届と混同されることが多い)を役所に提出し、ようやくタラちゃんは「磯野タラオ」としてサザエと同じ戸籍に入れるのである。

こうした煩雑はんざつな手続きを要するのは、それだけ戸籍が現実の家庭と乖離かいりしているという証左である。ここには「氏が同じであってこその家族」という家制度の名残りがあるといえるだろう。