精神力の強い人は何が違うか。明治大学文学部教授の齋藤孝さんは「人は逆境でこそ自分の強さを知る、自分の強さに気づくことができる。逆境が来たら、『よし、これでまた自分が強くなれる』と思うくらいの気持ちで『さあ、来い!』と迎え撃つといい。その迎え撃つ強い境地、覚悟みたいなものを持てれば、人間は根底的なところで安定する」という――。
※本稿は、齋藤孝『上機嫌の魔法』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
週刊誌の連載打ち切りで強化された“落ち込み耐性”
いやなことを経験すると、そのときはつらいものですが、それによって“落ち込み耐性”が強化されることがあります。
ぼくにも経験があります。
以前、執筆していた週刊誌の連載が終わりになったとき、最初はひどく落ち込みました。「自分の連載はそんなにつまらなかったのかなあ」と。
担当の方は「誌面をリニューアルすることになりまして……」と説明してくれましたが、打ち切りということです。
連載がはじまるということは、「最終回」も必ずあります。それはわかっていても、受け入れるのがむずかしかったのです。
けれども二回目に同じようなことがあったときは、ダメージは半分になりました。さらに三回目になると四分の一、四回目になると八分の一……、さらに十六分の一、三十二分の一と、どんどんダメージが小さくなりました。
いまでは雑誌の連載に限らず、テレビのMCとかコメンテーターなども含めて、担当者から終了を告げられても、ふつうに、
「ああ、そうですか。残念ですが、わかりました。次の機会によろしく」
と、笑顔で接することができるようになりました。
相手にも相手の事情があるわけだから、そこでいちいち傷ついていても仕方がない。そういうときでも、上機嫌をキープすることは大事だと学びました。
そんなふうに落ち込み耐性がついて気分の落ち込みが減ったおかげなのか、上機嫌にしていると、新しい仕事がちゃんと入ってきます。

