グーグルやメタにはない「圧倒的な強み」
アマゾンほど、事業会社とテクノロジー会社が完全に融合している企業は存在しない。
表の顔はEコマースと物流を軸とする「小売企業」だが、その裏の顔は、世界最大のクラウドプラットフォームを運営する「テクノロジー企業」である。この2つの顔が、表裏一体で連動しながら進化してきた――これこそがアマゾンの最大の強みである。
創業当初からアマゾンは、「顧客中心主義」を掲げ、どの企業よりも速く・正確に・安く商品を届けることにこだわってきた。そのために、倉庫から配送、決済、会員制度まで自社で内製化し、リアルな補完資産(Fulfillment Network)を築き上げた。これが、同社の「物理的な競争優位」の基盤である。
一方で、その物流や販売を支えるIT基盤を自社で開発した結果、そこから生まれたのがAWS(Amazon Web Services、アマゾン・ウェブ・サービス)である。もともと社内の業務効率化のために作られたシステムを、外部にも開放したことで、世界中の企業・行政・大学・スタートアップが利用するインフラに成長した。
つまりアマゾンは、「リアル×デジタル」「B2C×B2B」「消費×産業」という2つの軸を自ら内包した企業だ。それが、他のプラットフォーマー(グーグルやメタ)にはない圧倒的な強みとなっている。
アマゾン全体を動かす「心臓」とは
AWSは今や、アマゾン全体の営業利益の約60%を生み出している(2024年度)。この利益が、EC・物流・デバイス・AIなど、あらゆる新規事業の投資を支えている。言い換えれば、AWSがアマゾンの“心臓”であり、そこから生み出される血液(資金)が全社に循環している構造だ。
Eコマース事業は薄利であるが、その分顧客との接点・購買データ・ロイヤルティを得る。そのデータがAWSのAIモデル学習に活かされ、AWSで得た生成AIや自動化技術が再び小売体験に戻る。このようにして、データと技術が双方向に循環する「学習型経営構造」が形成されている。
AWSはクラウドという「デジタルのインフラ」、アマゾン本体は物流という「フィジカルのインフラ」を担い、その2つが相互作用することで、アマゾンはデジタルとリアルの両輪を同時に駆動する企業になっている。

