夫婦が家購入を成功させるためには何が重要なのか。ファイナンシャルプランナーの高山一恵さんは「相談を受ける夫婦の希望や世帯年収はさまざまだが、どの夫婦も、なぜ賃貸ではなく『購入』したいのかをあらためて考えてほしい」という――。

※この連載「高山一恵のお金の細道」では、高山さんの元に寄せられた相談内容を基に、お金との付き合い方をレクチャーしていきます。相談者のプライバシーに考慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。

拡大レンズの下の紙の家
写真=iStock.com/SvetaZi
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「家を持ちたい」相談に来た2組の夫婦

新築マンションの値上がりが続く中、東京都心では中古マンションも高騰が続いています。東京都全体では、9年前に比べて中古マンションの平均売買価格が約67%上昇しているという調査結果もあり(マンションリサーチ「東京23区中古マンション価格推移と価格上昇率ランキング【2025年10月最新】」)、今後も上昇基調は続く見込みです。

そんな“マンション価格高騰時代”に「家を持ちたい!」と相談にきた2組の夫婦の例から、共働きカップルの賢い物件の選び方を考えます。

さまざまな調査で都心部のマンション価格は値上がり傾向が続くと言われていますが、ファイナンシャルプランナーの私も同じように捉えています。特に港区や千代田区といった資産価値の高い人気エリアでは、中古マンションであっても値崩れの気配はほとんどありません。

私自身、思い起こしてみても、直近で価格が下落したのは東日本大震災時しか記憶になく、当時、表参道にある2DKの中古マンションが7000万円ほどで売りに出されていました(ちなみに現在、この物件は1億2000万円くらいまで高騰しています)。

つまり、利便性の良い、高い資産価値のある中古マンションにおいては、値下がりを待ってもその時は訪れない可能性が高いのです。

都内でマンションを持つのは諦めるしかないのか――。そんな風に思われるかもしれませんが、まずは皆さん、「そもそも(特に都内に)家を持つ必要があるか?」ということに立ち返ってほしいと思うのです。そこで、私のもとに相談にきた2組のご夫婦の例をお話します。

タワマンを手に入れたのに「生活がすさんでいる」

パワーカップルの酒井さん(仮名)は、30代で夫・妻共に年収1000万円を超えていました。夫妻は出産前に23区内の物件を探していて、私のもとに相談にきたのです。そして妻はすでに、1億円超えのタワマンに狙いを定めていました。たしかにその物件は資産価値としても申し分なく、彼女は産後も仕事を続けていく意思が強かったことから、月々約24万円のローン返済も可能な範囲でした。しかし……。

タワマン購入後に無事子どもが生まれたものの、妻の体調が悪化。希望していた職場復帰も叶わず、世帯収入は激減してしまいます。夫の片働きの収入だけでもローン返済は可能ですが、旅行といったふだんのレジャーは我慢せざるを得ず、「生活がすさんでいる」ということでした。