多くの観客と視聴者で盛り上がった、9月の「東京2025世界陸上」。アスリートと同様にライバルたちとバトルを繰り広げたのがスポーツブランドだ。スポーツライターの酒井政人さんは「成績上位者が履いたシューズを調べると、ナイキ、アディダス、アシックス、プーマなどメジャーなブランド以外の新興や老舗のブランドにも存在感があった」という――。

盛り上がった世界陸上のウラで熾烈なブランドバトル

東京で34年ぶりに開催された世界陸上(9月13~21日)の会場・国立競技場には計約62万人が来場した。大会を生中継したTBSは総視聴人数が7977万人を突破したと発表。大会最終日の平均世帯視聴率は19.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)に到達したという。

美しく躍動したアスリートだが、その裏ではスポーツブランドも激しい戦いを繰り広げていた。

日本代表のユニフォームはアシックス

今回、「東京2025世界陸上」に関する単語、画像、マークなどの使用を許されたオフィシャルパートナー契約を結んだ日本企業には、アシックスを筆頭にTDK、セイコー、ソニー、ホンダが名を連ねた(グローバルサポーターは大塚製薬、森永製菓などが参画)。

日本代表のユニフォームも「サンライズレッド」のアシックス。選手が着用するものと同一仕様のオーセンティックシャツと応援Tシャツを販売し、サッカーのサポーターのように国立競技場では代表Tシャツを着て応援している方がたくさんいた。オランダとベルギーにもアシックスはオフィシャルサプライヤーとしてユニフォームを提供し、存在感を示した。大会期間中、同社はアスリートの魅力がわかる体験型イベントを実施した。

アシックス以外も都内でPR展開

他のブランドも負けていない。アシックスのように「東京2025世界陸上」の文句は使えない代わり、販促に下記のようなさまざまなアイデアを凝らした。

●ナイキ:原宿の旗艦店を8月末に閉店して、9月11日に移転増床オープン。
●オン:パリに次ぐ世界2番目の大規模店となる「On Flagship Store Tokyo Ginza」を9月12日に開店。東京世界陸上期間中にはブランドスペース「On Labs Tokyo」もオープン。
●アディダス:村竹ラシッド(JAL)とノア・ライルズ(米国)を起用した新キャンペーンを実施。2人の迫力ある写真と「YOU GOT THIS(大丈夫、いける。)」というメッセージが書かれた大型広告パネルを都内の駅などに貼った。

筆者が取材した中で最もインパクトがあったのはプーマだ。

プーマを着用するウサイン・ボルト
画像提供=プーマ
プーマを着用するウサイン・ボルト

本番直前にもかかわらず、男子棒高跳びの世界記録保持者であるアルマンド・デュプランティス(スウェーデン)ら“出場選手”がイベントに出席したのだ。

さらに男子100mで9秒58の世界記録を保持するウサイン・ボルト氏(ジャマイカ)もトークイベントに登場。2009年に現在の最先端スパイクを履いていたら「9秒42」というタイムが出たという研究データも発表されて、大きな話題になった。それほど、最新のシューズは進化しているということだ。