お金に恵まれる人と苦労する人とでは何が違うのか。伊勢丹や鈴屋で海外事業などの立ち上げに関わった経験がある中野善壽さんは「お金に好かれるにはお金の使い方一つひとつに自分の意志を反映することが大切。意志のないままお金を使うことは危険」という――。

※本稿は、中野善壽『お金と銭』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

お金の問題に苦しむ男の画像
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キャッシュレスに慣れてしまう危険性

今、世の中は急速にキャッシュレス社会へと進んでいます。

お金を一瞬たりとも触らずに、ピッとスマートフォンの画面をかざすだけで「支払った」ことになるシステムというのは、たしかに便利かもしれません。しかし、弊害も大きいというのが私の意見です。まず、「お金を使った」という実感を持ちにくい。ゆえに、いつの間にか必要以上にお金を使い過ぎることになる。

「自動チャージ」や「リボ払い」は特に危険です。キャッシュレス決済に慣れ過ぎた社会人に、お金の勘定ができるのだろうかと少々心配です。

浪費のリスク以上に私が懸念するのは、人に対する「感謝」が薄れることの弊害です。「大切なお金を、商品やサービスの代わりに渡す」という価値交換の行為を、ピッという機械音だけで済ませるのは、人間同士の接点を減少させていると感じてしまいます。

お金の使い方一つひとつに意志を持つ

関連して、「老後のための資産づくり」としてにわかに注目を集めた運用についても、給料から「天引き」で済まそうとするのはおすすめしません。

運用、つまり投資とは、本来、その都度に明確な“意志”を持って行うべきですが、天引きで毎月自動で完了するとなると、その瞬間の意志がなにも反映されません。私は投資は、自分で考えて選んだ相手(個人や会社)にしか実行したことがありません。

コンビニで買い物をする。

老後のために投資する。

そうした一つひとつのお金の行為に、瞬間瞬間の自分の意志をきちんと反映できているか。意志が見えるお金の使い方ができれば、より一層「生きている」感覚が得られます。