競争の世界でしのぎを削るのはもうイヤだ。かといって「がんばらない生き方」も何か違う。周囲の目を気にせず、すぐには結果を求めない。大谷翔平選手も藤井聡太名人も実践する「ゆるストイック」の思想とは――。

※本稿は、佐藤航陽さんの著書『ゆるストイック ノイズに邪魔されず1日を積み上げる思考』(ダイヤモンド社)を要約し、再編集したものです。

【ゆるストイック 1】
相反する価値観の生き方が求められている

競争は疲れるけれど、世間に流されたくはない

経済が無限に成長する時代は終わったけれど、「もう、がんばらなくてもいい」というわけにもいかない。どうするか。私の答えは、これからは自分の価値観を大切にしながら柔軟に生きる=「ストイック」と「ゆるさ」を兼ね合わせた「ゆるストイック」な生き方がふさわしいというものです。やみくもな競争は疲れるけれど、世間に流されたくはない。そんな人にお勧めの生き方です。

競争の世界で圧倒的な結果を残している井上尚弥、大谷翔平、藤井聡太といった人たちは、かつてのアスリートとはちょっと違う。周囲の評価に左右されず、修行僧のように自分を磨き続けるストイックさがある。なのに、他人に自分の価値観を押し付けない柔軟さも備えている。彼らのストイックさが、まさに「ゆるストイック」です。

自分の「やるべきこと」を明確にし、そこに集中するけれど「がんばればすぐに成果が出るはずだ」と意気込んだりしない。意気込むと結果が出ないときに燃え尽きてしまうでしょう。一方、「がんばらない生き方」では目標を設定し進んでいくのは難しい。ゴールを急がず楽しんで努力を継続するスタンスが今の時代にふさわしいのです。

現在、世界中で同じような現象が加速しています。コロナ禍を経て、アメリカの経済に「K字型」の分かれ道ができていると言われます。経済が「持つもの」と「持たざるもの」に二極化しています。今のアメリカでは年収1000万円でも生活が苦しい。資産を持つ一部の人たちだけが豊かな暮らしを満喫できるのです。

中国では「寝そべり族」「プロ子供」という言葉が誕生し、韓国ではコロナ禍をきっかけに「働いていないけれど積極的に求職活動をしていない人」が240万人を超え、現役世代の労働人口の7%に達しました。

日本は1990年代をピークに年収の中央値は低下し続けています。手取りが減る中、世界的なインフレは加速しており、統計上の数字より、はるかに所得は低くなっています。今の経済は、好況でも不況でもなく「好調な人もいれば、不調な人もいる」という曖昧な状況です。先進国では「中流」が消滅し二極化が加速しています。こうなると社会への不満が溜まった人々を強い言葉で煽動する政治家(ポピュリスト)が登場することも多くなる。では、この二極化した社会をどう生き抜くか。

私はちょうど、将来を見据えた学び直しをしたいと思っていた時期に、コロナ禍がやってきました。自粛ムードの中、この機会を利用して腰を据えて新しい技術を学んだおかげで、「自粛期間」が明けると「仮想現実」と「宇宙開発」という、それまでとはまったく違う分野の専門家になっていました。

当時、周囲で釣りやキャンプに興じ、「がんばらなくていい」という人が増えていました。流されてはいけないと思いつつ、彼らに干渉したりはしませんでした。「ゆるストイック」を体現できていたのだと思います。「自分を律するストイックさ」と、違う考えを許容する「寛容(ゆるさ)さ」。相反する価値観を持つ「ゆるストイック」な生き方が強さに繋がるのだと感じます。

【ゆるストイック 2】
「コントロールできること」と「できないこと」を区別する

SNSのアプリを消して情報を遮断する

では、どうすれば「ゆるストイック」に移行できるのか。