仕事に役立つ便利な言い回しを身につけよう

習慣づけると相手のフレームワークが理解できて仕事に役立つ便利な言い回しがあるので、ご紹介しよう。相手から大事なことを伝えられたあとに、必ず自分の言葉で言い換えてみるのだ。「それについて私は○○と理解したのですが、合っていますか」と、理解したことを自分なりの表現で確かめてみる。相手の言葉のオウム返しではいけない。

たとえば、顧客と商談する件で、上司が「では来週、先方に伺うことにしよう」と言ってきたとする。「来週ですね、わかりました」では、よろしくない。ここで、先方への訪問が明日でなくなぜ来週なのか、の理由を考えるのだ。上司の単なる都合からなのか、もしくは先方へ持ち込む資料を作り直すのか、ひょっとすると、自分の転勤辞令が出ているのかもしれない。

つまり、上司の言葉の向こうにある無限の可能性に思いを馳せるのである。そこで、「わかりました。では資料を今週中に作り直しましょうか」と返事すると、「いや、その必要はない。銀座「空也」の最中を持っていくので、予約してほしい。奥さんがたいそう好物らしい」と返ってくるかもしれない。

ここで、上司は商談成立のために奥さんも戦略ターゲットにしているのがわかる。来週は最中の由来から話を切りだそう、と考えて、それまでゆっくり別の仕事をしていればよい。おまけに、その上司はかなりの気くばり型人間であることが見えてくる。

「以心伝心」で勝手に推察するのではなく、ほんの少し言葉を添えるだけで、コミュニケーションは深くなってゆく。

「フレームワーク」と「生き方の旗印」は、その気になれば誰にでも見えてくる。会社でも家庭でも2つのキーワードを意識するだけで、人間関係は劇的に改善するだろう。

自分は人づき合いが下手だと思い込んでいた人は、ただ注意を向ける方向を知らなかっただけにすぎない。私のような理系オタク研究者ですら、この視点を持つだけで驚くほど人づき合いがうまくいくようになった。あなたもブリッジマンになるべく、ぜひ1度試していただきたい。

注:(1)鎌田浩毅著『成功術 時間の戦略』文春新書,第4章,2005年(2)鎌田浩毅「ゴーンは『自ら語る組織』をどうつくったか」プレジデント2003年7.14号,p.90-93(3)宮澤やすみ著『東京社用の手みやげ』東洋経済新報社,2007年