マナーやエチケット、気配りには明確な正解がない。しかも、これら「空気の読み方」について注意されると面目を潰された思いがする。鈍感な部下を傷つけることなく更生させるにはどうしたらよいのだろうか。
「カッコいい」「カッコ悪い」という次元で教えろ
空気が読めない部下の指導は、とても難しい。なぜかといえば、ビジネスにおける「空気を読む」という技術は、他人に対しての気配りやマナーやエチケットに関するものだからである。マナーやエチケットに、はっきりとした “正解”はない。
たとえば、食事が終わった後に、くちゅくちゅとお茶で口をすすぐのは、歯にこびりついた食べ残しをとって、歯をきれいにするというおばあちゃんの知恵。それ自体は、決して間違いではない。けれども、それを人前でやるのは、とても見苦しく、マナー違反と見なされかねない。だから、もし部下がそれをしているのだとしたら、「接待や、懇親会のような席では、お茶をくちゅくちゅしないほうがいいよ」と言って諭すのが、上司としての思いやりである。
しかし、相手によっては、食後のお茶で口をすすごうが一向に気にしない人もいたりするので、問題はややこしくなる。空気を読むという点に関しては、確実な“正解”と呼べるものがないので、上司としても、教えたほうがいいのか、そんなものは余計なお世話なのか、判断がつきかねるのである。
空気が読める立派な部下であれば、自分がマナー知らずの行動をとったとき、「なるほど、こうすればよかったのか」と自分で気づいて、その行動を改めてくれるであろう。けれども、空気が読めない部下には、そういう期待はできない。
これが幼稚園児や小学生くらいなら、マナーやエチケットは親や学校の先生が教えてくれる。だが、社会人になってからは、マナーを欠いた行為をしていても、だれも何も教えてくれない。