図3で注目してほしいのは、21.9%から始まる縦に並んだ数字である。この調査では、自らの権限や納得感、勤める企業の人事管理などに関する合計48の設問項目を設け、回答者が自分自身や職場の状態について、各項目に同意するかどうかを問う形で調査を行った。
ここにある数字は、その右にある項目について、部長が「そう思う」と答えた割合(%)から、課長が「そう思う」と答えた割合を引いたものであり、いうなれば、この項目に関する、部長と課長の認識の格差である。プラスであれば、各項目について、より多くの部長が同意していることを示している。全部で48項目あるが、格差の大きさ順で上位25項目と下位2項目を示した。下位の2項目は、数字が逆転をしており、課長のほうがより高い同意率であることがわかる。
項目の内容を見ると、部長と課長の格差が大きい項目には大きく3種類あるように思われる。まず第1が「不満があったときに経営に対して発言することができる」「職場では言いたいことが言える」「私は評価の仕組みに納得している」「私は会社の状況や経営情報を知る機会が多い」「私には納得性の高い目標が設定されている」などの参画意識や職場での発言や納得感、情報共有などに関する項目である。
また第2のグループとしては、「仕事を通じて人材としての価値を高めることができる」「自分にとってチャレンジングな仕事をする機会が多い」「仕事を通じて人間として成長できる」「今の会社での中長期的なキャリアがイメージできている」など、自らの人材としての成長機会に関する項目がくる。
さらに、第3の項目群は、「私は社内で人として尊重されている」「私には設定された目標達成のために必要な裁量が十分に与えられている」「職場の人は私のことをよく理解してくれている」など人材として信頼、尊重され、仲間として受け入れられているか否かに関する内容がきている。
数字を見ると、これらの項目について、課長層は、部長層よりも10ポイント以上低い同意率であり、いうなれば、部長層に比べて、課長層はこれらの状況にいると認識する可能性がそれだけ低いのである。ある意味では実質的な、仕事内容や仕事状況の格差が起こっているといえよう。
もちろん、経営に対してものが言える程度や経営情報を知る機会などは、職階によって一定の差があって当然だという主張もありえよう。だが、これに対して、成長の機会や人材として扱われている感覚などについて大きな格差があるのはどうだろうか。いや、考えてみると、成長の機会やチャンレンジングな仕事などについては、部長よりも、いまだ成長可能性のある課長層が、こうした機会を認識する可能性が高くても不思議ではないという議論も成り立つ。また、人材としての信頼や尊重についても、部長と課長で格差があるべき理由は見つからない。