経営層と現場を繋ぎ合わせる真のミドルとは

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図2 役職別賃金の推移

2種類のデータを見てほしい。まずは、図2にある課長の報酬である。どういうふうに比較をするかによって、結論が違ってくるが、ここでは、1つ上の部長層との比較を行った。図1にもあるように、部長は課長のさらに3分の1程度の割合であり、また多くの企業で部長層のポストを少なくする傾向にあることも考えると、かなり絞り込まれた中核的な管理職である。いや、私の感覚では、部長層はもうかなり経営層に近い職階だとの認識があってもおかしくない管理職である。真の意味の管理職といってもよいだろう。そこで、今回は、部長層との比較を通して、課長層の位置づけがどうなっているのかを確認することにした。

図2によれば、所定内賃金を見た場合、部長も課長も07年ぐらいまでは、同じように上昇しているが、08年あたりから、ゆるやかに課長層と部長層の給与格差が広がっているように見える。さらに、この格差拡大は、課長層の給与が横ばいになるのに対して、部長層の給与が上昇していることで起こっているようである。少しずつだが、部長の給与が上がり、課長の給与が上がらないという傾向が見られるのかもしれない。賞与には目立った傾向はないが、所定内賃金などの基本給与が、人材に対する企業の価値づけの反映だとすれば、相対的な意味で、課長の価値が低下しているのかもしれない。

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図3 組織や人事管理に関する認識の部長-課長格差

もう1つが図3である。このデータは、日本経済研究センターの「働きたい会社―従業員価値を高めるには」研究会(主査は筆者)が10年7月に実施した、従業員から見た組織力の評価に関するインターネット調査の一部である。調査は、調査会社(日経リサーチ)に登録した人からの回答に基づき、サンプルの割り付けに当たり、企業規模を除き、性別、年齢構成などは極力、母集団である労働市場での雇用労働者の分布に近づくように設計した。全体で20~64歳で、従業員規模1000人以上の企業にフルタイムで勤務する計1847人のデータが得られた。ここで報告するのは部長または課長と答えた回答者に絞り込んで、再集計を行った結果である。サンプルは、418人であった。