発足宣言から透ける「思想統制」

このような女性の大衆動員は、従来の戦争ではなかった事態である。しかし会の目的はそれだけではなかったことが、会発足時の「宣言」(大日本国防婦人会総本部編『大日本国防婦人会十年史』)から読み取れる。

一 世界にたぐいなき日本婦徳を基とし益々之を顕揚けんようし悪風と不良思想に染まず国防の堅き礎となり強き銃後の力となりましょう

二 心身共に健全に子女を養育して皇国の御用に立てましょう

三 台所を整え如何いかなる非常時に際しても家庭より弱音を挙げない様に致しましょう

四 国防の第一線に立つ方々を慰め其の後顧の憂を除きましょう

五 母や姉妹同様の心を以て軍人及傷痍軍人ならびに其の遺族、家族の御世話を致しましょう

六 一旦緩急〔有事〕の場合慌てず迷わぬよう常に用意を致しましょう。(同)

ここにみられる会の目的は、「二」の子育てや「四」の慰問よりもむしろ、彼女たちの思想統制であったといえる。「一」では「悪風と不良思想に染ま」ないこと、「三」では「如何なる非常時に際しても家庭より弱音を挙げない」ことを強調している。では、女性たちが忌避すべきとされた「悪風と不良思想」とは何か。