子会社のカネボウ化粧品が販売した美白化粧品を使用して肌がまだらに白くなる被害が、親会社である花王の業績に暗い影を落としている。カネボウ製品の自主回収に絡み、2013年12月期通期で100億円の減収を予想、そのうえ13年6月中間期で84億円の損失を前倒しで計上したからだ。この結果、13年12月期の連結最終利益の見通しは、従来予想の730億円から670億円へと下方修正を余儀なくされた。
しかし、肌への被害や不安を訴えた顧客は「想定以上に拡大」(カネボウ)し、7月半ばで6800人に達し、さらなる拡大が見込まれる。完全回収までの道のりも遠く、すでに顧客の「カネボウ離れ」が顕在化している中で、信頼回復に手間取れば、底が見えない「カネボウ禍」から、花王が業績面で一段と厳しい局面に追い込まれる可能性も否定できない。
花王の澤田道隆社長は7月30日の決算発表で、カネボウ製品の自主回収問題について、「グループ一丸となって原因究明と再発防止に取り組む」と繰り返した。ただ、「被害の拡大は織り込んでいる」とし、通期での損失が大きく膨らむ事態は想定していないとの認識を示した。
しかし、グループの化粧品事業は戦略の見直しを迫られる。同社は06年、経営破綻したカネボウの化粧品事業を4100億円で買収し、「ソフィーナ」ブランドで展開してきた花王の化粧品事業と併せてグループ化粧品事業を推進してきた。この間、物流効率化などの相乗効果でカネボウの収益は改善基調をたどっていた。しかし、自主回収問題によって、13年12月期で同社単体の売上高は100億円程度減り、1800億円程度となる見通しだ。営業利益も当初予想から60億円程度減額し、約110億円にとどまると予想している。
花王の12月通期の売上高予想は約1兆3000億円。カネボウのウエートは1割超にすぎず、利益面も「アジア事業の増益でカネボウの落ち込みを吸収する」(澤田社長)と至って強気だ。しかし、買収時に国内シェア第2位の「カネボウ」ブランドの独立性を尊重した結果、クレームなどの顧客対応をグループ一体で取り組む体制にはなく、最初の相談から2年過ぎてからの自主回収という対応の遅れが傷口を広げてしまった。その意味で、花王はリスク管理を含め、グループ化粧品事業戦略の立て直しを迫られる。