不登校の子はなぜ増えているのか。不登校・ひきこもり専門カウンセラーのそたろうさんは「学校を卒業し、会社に就職するという生き方だけが、唯一の幸せの道ではないことを子どもたちは知っている。親にとっての当たり前が子どもたちを追い詰めて、社会に出る力を奪ってしまっている」という――。
もう止められない「不登校が当たり前」の社会
不登校ひきこもり専門カウンセラーのそたろうと申します。
近年、不登校のお子さんは11年連続で増加し、過去最多を更新し続けています。令和6年10月に公表された不登校の児童生徒数は小中学校をあわせて34万人となりました(文科省「令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」)。30人クラスに必ず一人は不登校の生徒がいる割合です。
多くの方が「なぜ、これほどまでに増えているのだろう?」と疑問に思われているかもしれません。
その背景には、僕たちの社会、そして時代の大きな変化があります。
親御さん世代が子どもだった頃と今とでは、社会の「当たり前」が大きく変わりました。インターネットやスマートフォンの普及によって、子どもたちは多様な生き方や価値観に触れる機会が爆発的に増えています。
学校に行かなくても学べる方法があること。会社に所属しなくても収入を得られる道があること。世界には、自分たちが想像もしなかったような多様な人生の選択肢が存在すること。こうした情報を、今の子どもたちは当たり前のように知っています。
ここで、ひとつ想像してみていただきたいのですが、かつてこの世には「洗濯機」は存在せずに「洗濯板」で手荒れを起こしながら、時間をかけて洗濯をするのが当たり前でした。そこに「洗濯機」という便利なものが登場しました。そうしたら、どうでしょうか。一度その便利さを知ってしまったら、もう一度「洗濯板」だけで衣類を洗い続ける生活に戻るのは、非常に難しくなったはずです。決して洗濯板が悪いわけではありません。ただ、より楽で効率的な選択肢を知ってしまった以上、それを選ぶのはごく自然なことなのです。
実は、これと同じことが今、子どもたちの価値観にも起きています。


