正月休みの帰省。不登校の子どもがいる家庭では、「行くべきか」「無理をさせていないか」と悩む親は少なくない。親戚との集まりや何気ない一言が、回復しかけた子どもの心を再び閉ざしてしまうケースもあるという。不登校ひきこもり専門カウンセラーのそたろうさんは「年末年始こそ、親が“本当はどう過ごしたいか”を考えることが、子どもを守る分かれ道になる」という――。
新年を祝う家族
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深刻な相談が増える年末年始

不登校ひきこもり専門カウンセラーのそたろうです。

年末年始が近づいてきました。世間では「家族団欒」「帰省ラッシュ」などの言葉が飛び交いますが、不登校やひきこもりのお子さんがいるご家庭では、複雑な心境を抱えている方も多いのではないでしょうか。

「実家に帰る時、子供を連れて行った方がいいのか」「行きたがらない子供を置いていっていいのか」「孫に会いたがっている祖父母に、なんて伝えたらいいのか」「親戚が集まったとき、不登校のことを聞かれたらどうしよう」

あるいは、「家に親戚が来ることになったけれど、子供は部屋から出てこられるだろうか」「挨拶もせず閉じこもっていたら、親戚にどう思われるだろう」

そんな不安から、せっかくの休みも気が休まらず、親子関係がギクシャクしてしまう……。

実は、年末というのは、カウンセラーである僕のもとに「取り返しのつかないことになってしまった」という深刻な相談が急増する時期でもあります。

ここで対応を誤ると、どのようなことが起きるのか。

僕が過去に相談を受けたあるご家庭では、親御さんが「親戚の手前、顔だけは見せなさい」とお子さんを無理やり居間に連れ出してしまいました。その結果、お子さんは「家の中にも安全な場所がない」と絶望し、それまで少しずつ回復していたのに、再び完全に部屋に引きこもり、数カ月間、親と一切口をきかなくなってしまった――そんな「悲劇」が、毎年のように繰り返されています。

逆に言えば、この年末年始は、親子の信頼関係を劇的に深めるチャンスでもあります。周りの目や世間体よりも、「子どもの心」を守り抜くことができれば、「親は自分の味方なんだ」という強烈な安心感をお子さんに与えられます。その安心感こそが、新年に向けてお子さんが再び動き出すための、何よりのエネルギーになるのです。

これは、単なる「年末年始あるある」の悩みではありません。お子さんの未来を左右する、重要な分岐点なのです。今回は、こうした具体的なケースに対して、どのような心持ちで、どう対応していけば、悲劇を回避し、親も子も穏やかに過ごせるのか、一緒に考えていきましょう。