銀行や証券の取引、決済など、多くのものがデジタルで完結するようになり、生活の利便性は向上した。その一方で複雑化するデジタル遺品の問題に、どう向き合うべきか。「終活弁護士」がアドバイスする――。

パスワード不明だと遺影も作れない

2024年11月20日、独立行政法人国民生活センターから、デジタル遺品のトラブル事例とともに「デジタル終活」を推奨する旨の公式発表がなされました。

デジタル遺品とは、端的には、パソコンやスマホなどのデジタル機器を操作して生じる「もの」であり、一般的には、「パソコンやスマホ等のデジタル機器に保存されたデータやインターネットサービスのアカウント等」という形で定義されます。

デジタル遺品については、「デジタル機器に保存されたデータ」である「オフラインのデジタル遺品」と「インターネットサービスのアカウント等」である「オンラインのデジタル遺品」に分類されます。

具体例は左ページの図のとおりですが、スマホやパソコンの中に保存されている写真データや文書ファイルなどがオフライン、SNSアカウントやクラウドサービスのアカウントなどがオンラインというイメージで大丈夫です。

もし、あなたの大切な人に万が一のことが起きた場合、他の遺品と同様にデジタル遺品についても処分をする必要があります。例えば、サブスクリプション(サブスク)であれば解約が必要となりますし、ネット証券口座については相続手続きが必要となります。

また、葬儀の際に、遺影として使用するための写真をパソコンやスマホから取り出したり、電話帳やメールの履歴などから故人の友人や知人の連絡先を確認したりすることが必要になることもあります。

亡くなった方(以後「故人」)が、どんなデジタル遺品を持っていたのかを確認する最も簡単な手段は、パソコンやスマホなどのデジタル機器内の調査となります。

しかし、昨今のデジタル機器、特にスマホにおいては、パスワードロック機能が備わっており、故人がログインパスワードを家族らに伝えずに秘匿していた場合には、ロック解除ができず、デジタル機器内にアクセスできないため、デジタル遺品の概要を把握する調査が困難となります。

特に、iPhoneについては、10回連続でパスコードを誤入力してしまうと、スマホ自体へのログインが制限されるとともに、スマホ内のデータが完全消去(初期化)されてしまう機能が設定されていることがあり、注意が必要です。実際、故人のスマホ内にアクセスしようとパスコードを何度も入力してしまい、気がついたときにはスマホ内のデータが完全消去されていた、というケースをよく耳にします。

また、Androidについても、機種によっては、複数回ログインパスワードを誤ってしまうことでiPhoneと同様にスマホ内のデータが完全消去されてしまう機能を有しているものもありますので、同様に注意が必要です。