シンプルが故に奥が深い、二面性にやられた
夏も冬も1年間365日、白無地Tシャツ(白T)を着る。もちろん自宅のワードローブは、白無地Tシャツだらけ。20代で白Tにはまって以来、着用した型は数百型以上。コレクションは国内外のカットソーメーカー、ファストファッションから数万円のラグジュアリーブランド、希少なヴィンテージまで多岐にわたる。「途中から面倒になり数えなくなった」と本人は笑う。
世界広しといえど、白Tについて知り尽くしている人物は「自分以上の人はいないという自負がある」と、自称「白Tハンター」の夏目拓也は言う。
「白Tと言うとシンプル、ベーシックというイメージを持つ人も多いと思いますが、突き詰めていくと白の色味、生地感、デザイン、シルエット、生産の背景に至るまで、実は様々な違いや個性を持っている。Tシャツごとに、ストーリーがある。究極のシンプルが故に、奥が深い。その二面性が魅力だと僕は思っています」と、白Tへの熱い思いを語る。
「世界初」の小さな専門店に行列
「自分にとって正装が白T」という夏目は、その偏愛が高じて、大手広告会社・博報堂の花形マーケターの職を退き、白無地Tシャツを生業にしてしまった。
2016年4月、一番の理解者であり白Tラバーでもある妻・華と、同じく白T愛好家の友人・月岡信哉の3人で、自らの「偏愛」を形にした専門店を東京・千駄ヶ谷にオープンした。店名は、白のカラーコードとTを組み合わせた「#FFFFFFT(シロティ)」だ。
千駄ヶ谷の住宅街の一角、週末だけ営業する小さな店が発信する「世界初」の斬新なコンセプトは、オープン当初からメディアやSNSで取り上げられ、客が店に押し寄せた。
この客の波は一過性に終わることなく、夏目の予想以上に年々大きくなっていった。5年前、店の経営に専念するため、会社から独立。10年目を迎えた今も、営業時間は土日の午後のみ、広告は一切出していないが、客足は途絶えることがない。20代から70代、日本全国から海外まで、客層は広がりを見せている。
だれもが何かに対して「好き」という感情は持っているだろう。しかし、それを生業にすることは難しい。夏目はどうやって白Tへの「偏愛」を、アパレルビジネスとしての成功につなげたのだろうか。



