プレジデントFamily発の本『「賢い脳」は脂が9割』は、子供の成長に大切な脳が喜ぶ栄養についてわかりやすく解説。手軽につくれる賢脳レシピも満載しています。同書の著者、管理栄養士の小山浩子さんと、医学博士で発達脳科学者の成田奈緒子さんの対談を特別掲載します。

「賢い脳」は脂が9割地頭のよい子をつくる「育脳ごはん」

【成田】まず、人の脳がどのタイミングで、どんな発達をしていくのかについてのお話からはじめていきましょう。

人間の脳には脳細胞が800億以上、そのうち、神経細胞が150億〜200億個くらいありますが、生まれたばかりの赤ちゃんはそれらがまだつながっていない状態にあります。それが徐々につながり合っていくことで、はじめて体をうまく動かせるようになったり、話せるようになったり、言葉を使えるようになる。それが、「脳が成長する」ということなんですね。

そして、脳の成長に最も大切なこととしていつもお伝えしているのが、「育てる順番」です。脳には3つの種類があり、それぞれ違うタイミングで成長しているのです。

【小山】先生がいつもお話しされている、「脳発達の3ステップ」ですね。

【成田】そうです。まず、生まれてすぐから5歳までが「からだの脳」の発達時期。食べる、寝る、体を動かすなどの、生きるために最低限必要な機能を担っています。次が1歳から18歳に発達する「おりこうさんの脳」。記憶や言語や思考などの人間らしい高度な働きを担っています。3つめが、10歳から18歳に発達する「こころの脳」。これが「からだの脳」と「おりこうさんの脳」をつなぐ回路となって、はじめて欲求や感情のコントロールができるようになります。

脳はこの順番にしっかり育てることが重要。つまり、「からだの脳」がしっかり育たないと、その後の「おりこうさんの脳」と「こころの脳」もうまく育たなくなる……というわけですね。

小山浩子さん
小山浩子さん
管理栄養士。料理研究家。
大手食品メーカー勤務を経て2003年フリーに。子供の脳の成長をサポートする「育脳ごはん」を提唱。『頭のいい子に育つ育脳レシピ』(日東書院本社)、『子どもの脳は、「朝ごはん」で決まる!』(小学館)など、著書多数。成田奈緒子氏との共著に『やる気と集中力を養う3~6歳児の育脳ごはん』(池田書店)がある。

【小山】「からだの脳」という土台に「おりこうさんの脳」がのって、それを「こころの脳」がつなぐ……この順にしっかり育てれば、健康で、賢くて、優しい子に育つ、ということですね。とてもイメージしやすいです。

私も受けるご相談で一番多いのが、「何をすれば子供の頭がよくなりますか」というものです。私はいつも「子供の脳のために親が一番影響を及ぼすことができるのは、毎日の食事」と話しています。

生まれてから学校へ上がる6歳ぐらいまでの間は、脳が一番大きく発達する時期で、先生のお話でいう、「からだの脳」が育つタイミングですから、体をつくる栄養を子供に十分に与えてあげることが大事だと考えています。

【成田】おっしゃる通り、早期教育より、塾へ入れるより、まずは生きる基盤になる「からだの脳」を育ててほしい。そのために一番大切なのが、寝ること、起きること、食べること。毎日繰り返されるそうした生活習慣が、成長期の脳には一番影響力のある刺激になるんです。

だからこそ、生まれてからの5年間は「夜8時に寝て、朝7時に起きて、しっかり朝ごはんを食べる」生活を徹底してほしい。これが、昼行性の生物としての基盤をつくり、「からだの脳」を頑丈にします。

とりわけ、食事は非常に重要なファクターといえますね。

【小山】1日のスタートである朝ごはんが特に大切だと私は考えているのですが「子供が朝ごはんを食べてくれない」というご相談がとても多くて……。私は、朝にちゃんとおなかが空く状態をつくれれば、問題なく食べてくれると思っているのですが。

【成田】「おなかが空いた、食べたい、食べる、おなかいっぱいで満足」という、原始的な欲求のサイクルをつくる「からだの脳」が育っていない状態なんだと思います。

その原因の最たるものが、睡眠不足。食べたものは睡眠中に消化吸収されて便となるのが普通ですが、睡眠時間が足りないと、食べたものが朝になっても小腸に残ったままなんです。すると当然、目覚めても食欲がわかない。

このしくみを知らないで、無理やり食べさせようとする方がときどきいますが、それは絶対やめてもらいたい。子供にとって、食事の時間が楽しいどころか不安と恐怖の対象になってしまい、問題がよけいこじれてしまいますから。子供はよく眠れていれば、よく食べられるようになるもの。まずはしっかり寝る時間をとって、子供が自発的に「食べたい」となるように「からだの脳」育てをしてほしいですね。