冒頭で現状を憂えていた保険会社人事部の松谷も明るい見通しを示す。彼の属する会社も数年以内に女性管理職比率を30%まで引き上げる方針だ。ただし、世間体や法的コストを意識しているのではない。売り上げが頭打ちの現状を打破するには、優秀な女性管理職を登用するしかないという切羽詰まった経営判断だ。
「できる女性社員には会社に残って出世してほしいというメッセージをどんどん発している。業績を上げるためにね。でも、現場は総論賛成各論反対。『うちの部署は全国転勤があるから難しい』なんていう。そんなおじさんたちを説き伏せるために、若い新入社員の女性をあえて僻地に送ったりしているよ。見事に実績を出す人が多いね。じきに課長職以上の女性が増えていくよ」
できる女性の出世を邪魔するものの正体は、中高年男性による中高年男性のための企業文化だ。しかし、厳しい競争にさらされ、真に優秀な管理職が求められている業界から順に急速に変化し始めている。多くの会社で女性管理職が一定数を占めるようになったとき、日本の企業文化は様変わりしていることだろう。
(文中敬称略)
(撮影=向井 渉、川本聖哉)