性差別の法的コストが低すぎる
田中のように専門職として活躍する女性は多い。一方で、大組織のサラリーマンとして経営層にまで出世する女性は新聞記事になるほど珍しい。
しかし、女性進出が進む欧米諸国でもかつては日本と同様の状況だった。何が違うのか。国際人権NGO・ヒューマン・ライツ・ウォッチで日本代表を務める土井香苗は、「女性差別は国際社会で日本が継続的に恥をかいている分野の1つ」と断じたうえで、性差別による法的コストの低さが問題だと指摘する。
「アメリカなどでは性差別は明確に禁じられ、違反した場合は法的にも社会的にもダメージが大きいのです。2006年の北米トヨタのセクハラ事件が大問題になったのは記憶に新しいと思います。そして制度面で問題になる間接差別。一見すると性別に関係のない取り扱いであっても、結果として男女間に不平等を生じさせることも禁じられています」
土井によれば、女性差別に飲酒運転と同じぐらいの法的コストを与えれば、企業社会に「逆インセンティブ」が働き、できる女性が出世できない現状も一気に改善されるという。
「職場がある意味ではドライな場所になるでしょう。服装など、男女の違いを意識させるような発言は一切できなくなりますから。一方で、男性も育児休暇などを取りやすくなります。そうすれば仕事の場で男女の差はなくなりますよ」
土井が指摘するように、仕事をするために様々な人が集まる職場は本来ドライな場所なのだ。家庭に居場所がない人が意味もなく長時間労働をする所ではない。