次に「悲観」。悲観とは、明確な根拠がないのに「とにかくこれから事態は悪化していく」という思考に占有されてしまうことである。失恋した、財布を落とした、上司に叱責された……だからもう、自分の人生にいいことがあるとは思えない。そんな思考の流れが生む、悲しみと無力感と絶望とがからみあった暗い感情である(ここに見られる思考は、認知心理学では「過度の一般化」などと呼ばれている。少ない出来事をもって一般的な法則と見なしてしまうというのが、その特徴である)。

「後悔」の場合は、思考の対象が、もっぱら過ぎ去った過去である点が特徴である。過去に犯した過ちや失敗などについて、「あのときこうしておけばよかった」と考えたときに生まれる感情。もちろん、過去は変えようがないので、考えるたびに暗い気持ちになるのは、避けようがない。

最後に「不安」。これは、その人が「将来起こるかもしれない事態」に関して、そのマイナス影響を考えすぎることから生じる負の感情である。「会社がつぶれたら……」という事態を頭の中で想定し、「住宅ローンが払えない→路頭に迷う→一家離散」のように、マイナス方向の影響イメージを頭の中で増殖させていく。これが「不安」という感情を生む思考様式といえる。

このように、負の感情にはそれとセットになる思考様式があり、こうした思考傾向が強いほど、負の感情が生まれやすく、肯定的感情が維持しにくいために、幸福を感じにくいことになる。

このことは、逆にいえば傾向が弱い人は、幸福を感じやすいことを意味する。物事を決めつけない人、他人と自分を比較しない人、過度の一般化をしない人、過去のことを考えすぎない人(未来志向の人)、マイナス影響を過大視しない人、などがそうした条件に適合する人ということになる。

次ページの診断は、ここまでの考察をもとに、幸福を感じやすいか否かを評価するものである。チェックしてみてほしい。