個人差が生まれる第2の原因は、「思考(認知)のあり方の差異」である。

人間の感情は思考の産物であり、同じ出来事であっても、その人がどのようにそれをとらえるかによって、生じる感情は大きく変わってくる。つまり、「思考のあり方」の如何で、幸福の感じ方もまったく変わってくるということである。

では、どのような「思考のあり方」をしていると、より幸福を感じやすくなるのだろうか。言い換えれば「幸福を感じやすい人の条件」とは何なのか、ということだ。

その条件は、前述の定義に立ち返れば、意外とあっさりと判明する。それは、以下の2つに集約することができる。

第1の条件は、当然のことだが「欲求を満たしやすい思考特性」を持っていることである。何でも「人より多くないと嫌だ」と考える人は、「そんなに多くはいらない」と考える人と比較して、どう考えても充足感を感じにくく、幸福は感じにくい。できるだけ後者のような思考特性を持っていることが、幸福を感じるには必要である。

第2の条件としては、生への肯定感の持続を可能にするものとして「負の感情に陥りにくい思考特性」を挙げることができる。

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図3 幸福の感じ方の個人差を生む要因

どんなに欲求を満たす出来事があり、瞬間的な喜びがあったとしても、負の感情が日常を支配しているような状況では、いくらそうした瞬間を総和しても、「生きているって素晴らしい」ということにはなりえない。その人物に「負の感情に陥りにくい」という思考のベースがあって、はじめて幸福への道は切り拓かれるのである。

基本的には以上の2つが「幸福を感じやすい人」の条件となるわけであるが、まだ少し抽象度が高いかもしれない。次の段で、より具体的に考えてみることにしよう。

なお個人差を生む要因を図3にまとめたので参照されたい。