人間として生まれた以上、誰でも「幸せ」になりたいと思うのが当然だろう。社会のあり方としても、「経済発展」だけが果たして目標なのか、その意味が問われる時代にきている。
ブータン政府が提唱している「国民総幸福量」(GNH)という概念が注目されているのも、経済成長だけが、私たち人間の働く意味ではないという気づきが広がってきたからであろう。
経済成長から幸福度へ。この変化は、当然ビジネスの現場にも影響を与える。モノが売れなくなったと嘆く人が多いが、大量生産、大量消費という時代の流れが変わっただけのことかもしれない。
日本は、戦後驚異的な経済成長を遂げたが、日本人の感じる幸福度はさほど変わっていないというデータがある。
「経済成長をしても、幸福度は変わらない」という事実を、それを最初に議論した研究者の名前をとって、「イースタリンのパラドックス」と言う。イースタリンのパラドックスは、幸福とは何かを考えるうえでの出発点である。経済規模が増大することが必ずしも幸福につながらないからこそ、「質」を精査する必要がある。
ビジネスを、「幸福のソリューション」を提供する活動だととらえれば、そこには無限の可能性が広がっていることになる。必要なのは変化する社会情勢の中で、人間の本質は何なのか、それを見切る眼力であろう。
幸福になりたい、というのは誰でも持つ願望。それを助けるのがビジネスの役割。しかし、ビジネスと幸福実現の関わりも、情報化社会の成熟の中で変化していく必要がありそうだ。
人間が幸福について考えるときに、そこには「フォーカシング・イリュージョン」と呼ばれる偏向があることが知られている。