例えば、学歴がないと、幸せになれないとか、結婚しないと幸せになれないとか、あるいは正規雇用に就けば幸せになるとか、そのような特定のポイントに、自分が幸福になれるかどうかの分岐点があると信じてしまう。これが、「フォーカシング・イリュージョン」である。

学歴にせよ、結婚にせよ、就職にせよ、特定のポイントが満たされなければ幸せになれないと信じ込んでしまうと、幸せに至る多様な道筋が見えなくなる。実際には、人が幸せと感じる理由もそれを支える人生の基盤も様々である。その豊かさに目を開く手助けをすることこそが、これからのビジネスの本道であろう。

「結婚しないと幸せになれない」は錯覚。(写真=PIXTA)

幸せの方程式は、複雑な要因から出来ている。その多様な多項式の要素をどれくらい見極められるか。幸せを育む土壌は、1つの作物しか植えられていない「モノカルチャー」の農園よりも、様々な植物が生え、多彩な動物が行き交う「熱帯雨林」に似ている。ビジネスの「新ネタ」は、「幸せの熱帯雨林」の中にいくらでも転がっているといえるだろう。

幸せの図式の多様化は、「モノ」から「関係性」への人々の関心の変化にも表れている。人間にとって、他人とつながり、認め合うことは、関係性欲求を満たす大切な幸福の「要素」。その手助けをするビジネスが、もっとあっていい。

市場の既存観念にとらわれない新しいビジネスの芽は、案外、営利から離れてそれを始めているNPO法人の活動にある場合も多い。人間が幸せになるための条件をつくる活動は、すべてビジネスのネタになると言ってもいい。従来の観念にとらわれない柔軟な幸福へのアプローチが求められる。