幸福に近づくための思考訓練とは

前回の2つの課題(http://president.jp/articles/-/9944?page=4)は、基本的には各人がその意識を持ち、日々の思考を変えていくことで実現せねばならない。しかし、そう言われても、何をどう努力していいかわからないという人が多いと思う。

それぞれの思考の転換のあり方を、以下にざっと列挙してみたい。これを具体化した「練習問題」も付してあるので、これらを通じて、「なるほどこういうことか」という感覚を得ていただければと思う。

I.充足を得やすくする

「遍在型へのシフト」という観点から、より「欲求を満たしやすい状況」をつくるには、以下のような思考練習が望まれる。

(1)「そこにある幸福」に気づく

遍在型にシフトするとは、「幸福は今そこにある」という信念のもと、能動的にそれに気づこうと、自分の意識のあり方をシフトすることである。

たとえば、春の頃ならば、街は新緑にあふれているはずで、じっくり見つめれば、一瞬ではあれ、誰もが心穏やかな、ある種の満ち足りた気分を味わうことができるはずである。通勤のあわただしさの中でも、その方向にあえて視線を向けていくこと。そういう意識を持つことが大切である。

(2)「日常の価値」に気づく

東日本大震災が、不幸な中にも意味があったとすれば、「当たり前」と思っていた日常がどれほど貴重なものかを、強烈に再認識させてくれたことである。家族がそこにいること、家があること、電気が使えること、食べ物や飲み物が苦労なく手に入ること……当たり前だと思っていた日常が、いかに危うく、それゆえに大切なものであるかに気づいたことは、この国の未来にとって、かすかな希望であったように思う。

しかし、本来それは、天災によって強いられて認識するようなものではなく、自分自身で能動的に認識しなければならないはずのものである。「今ここにある日常」という奇跡。その大切さに気づく努力は、幸福への重要なステップとなる。