都市は、完成から時間が経過するにつれて鮮度が落ちていく。むろん成熟ということはある。都市に集まる顧客の絆は時とともに強まっていく。しかし、鮮度が落ちてしまった都市に人は集まらない。いかに長い歴史を持った都市でも、人が集まる都市では必ず新しいことが行われているものなのだ。

タウンマネジメントとは、できあがった街を活性化させる仕組みだ。ハードだけでなく、ソフトを含めたさまざまな仕掛けを通じて、都市の鮮度を保つ。自然に任せるのではなく、人が集まりやすいきっかけを提供する。そのために知恵を絞る。

都市づくりにおいては、「こういう都市をつくりたい」という完成イメージを明確に描く力が必要になる。この能力は料理の才能に近いものがあると思う。優れた料理人は、味見をしなくても、素材と調味料をどう組み合わせれば、どんな味になるかを明確にイメージできる。都市づくりも同じで、さまざまな要素を組み合わせた結果、どんな街になるのかを明確にイメージできなければ、優れた「都市づくり人」にはなれない。

レストランで味わった料理を自宅で再現するには、さまざまなレシピがあらかじめ頭の中に入っている必要がある。都市づくりでも同じで、さまざまな都市を実際に歩き、顧客の顔つきや店舗の雰囲気がわかっていなければ、イメージは現実化できない。興味を持ち、自ら積極的に体験し、自分なりの視点を持つ。そうしてつくりあげたしっかりとしたベースがあるから、新しいものが生まれてくる。どの世界でも同じことが言えるはずだ。

そして、都市づくりの根本は「こうすればもっと人が喜ぶんじゃないか」という気持ちだ。そこが欠けていれば、人が集まる都市など絶対につくれない。

完成イメージを描く能力と同時に重要なのが、強いリーダーシップである。たとえば六本木ヒルズの場合、地権者は約400人にも上った。これだけ多くの人々に完成イメージを理解していただき、同じ船に乗って事業を進めていくためには相当なバイタリティーが必要である。