ほかにも、「基本料金」とは一体何なのかといった疑問からさまざまな料金の歴史に向かったり、ふだん使うことのない「銭」をなぜ使うのか、いつ生まれたものなのかといった疑問からお金の歴史に向かったり、「契約」という言葉から「条約」の話へ、さらにはTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の話へと広げることができる。

それだけではない。記された数字を追えば算数に、電気の仕組みを追えば理科につながり、トレーシングペーパーを貼って上から文字をなぞれば漢字練習になる。国算理社のすべてを勉強できるのだ。

生活に密着した紙1枚という意味では、新聞の折り込みチラシは、最も身近な教材といえる。

「導入としては、商品ごとにハサミで切り抜き、お店屋さんごっこをしてはいかがでしょうか。予算の中で商品を購入するといった思考力を養ったり、4割引きなどの計算になじむことができます。消費税については計算力をつけるのに役立つほか、“税”とは何かを調べるきっかけにもなります」

さらに注目すべきは、生鮮食品を中心に明記されている「産地」。


スーパーのチラシは商品ごとにハサミで切り抜いて、白地図に貼っていけば、どの土地で何がとれるか、どれだけの距離を移動してくるのかが明確になり、必要エネルギーにも目が向くようになる。

「商品を切り抜いて、産地ごとに白地図に貼っていくのが子供にとっては楽しいようですね。その距離を運ぶには、どれだけ時間と手間がかかり、エネルギーを使うのかといったこともわかりやすくなります。国産の野菜などであれば、単に産地を知るだけでなく旬を知ることにもつながります。また、最近は輸入食品がとても多彩で、TPPの勉強にもつながります」

アウトドアショップのチラシであれば、キャンプ用品それぞれがどういうときに必要かを考えていくと、家庭生活におけるもののあり方がわかってくる。加えて災害時の対応策も見えてくるだろう。また、DIYショップのチラシを見れば、どのような産地でどのような木材や石材が採れるかまでわかる。

「お母さん、お父さんの多くはテスト世代。ややもすると子供を自分が思うゴールへと誘導しがちです。でも、これからは違います。これを教えなければならないというゴールはないのです。固定化した答えは持たず、子供の反応に対し『そんな発想はできなかった!』と感動してください」

(遠藤素子=撮影)
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