見た目はおとなしそうな方ですが、娘への強い愛情が勇気ある行動へのエネルギーになったのでしょう、と馬上は話す。

「誰にでもできることじゃありません。第1志望校ならまだしもあくまで押さえ校ですからね。亜梨沙さんのためを思ってのことでしょう」

亜梨沙さんの受験結果はというと、第4志望から第3、第2、そして本命の慶應女子へと合格を重ねる全勝街道だった。

もう1人、馬上の記憶に残る母親がいる。息子・遼さんが早稲田の系属校を目指した美佐子さんだ。ある日の面談のこと、美佐子さんが英検の合格証やら、スポーツの表彰状やらを抱えて持ってきたという。

「わが子の履歴と呼べるものすべて並べて、推薦入試に使えるものはないでしょうか、と相談されました。場合によっては、そこまでやるか、となりますが、このお母さまの場合は決して、出すぎた感じではありませんでした。本当に、息子さんのことを思ってなさったことです。自信を持ってそう言えるのは、何度か面談での親子間のやりとりを見ていたからです。ごく自然にコミュニケーションが取れていて、きっと家庭でもこんな感じなんだろうなと思えたのです。遼くんは精神的に安定していました。もちろん、学力も安定的に発揮できるわけです」

残念ながら、推薦入試には受からなかったものの、一般入試は併願校を含め4戦全勝。遼くんは希望通り、早稲田の系属校に進学した。後日、彼は馬上を訪ねてきて、「母には夜食作りや健康管理でも支えてもらい、感謝しています」と言ったという。