不合格家族――成績優秀トップの娘が、なぜか本番は力を出せず

成績優秀な子でも入試本番でアガッてしまい、実力をまったく出せず、不合格というケースは少なくないのです。母親が過保護気味な子には、そういった面があり、危険を感じます。リラックスして挑める小規模の模試では、良い成績が取れるので、なかなか問題が表面化しないのがやっかい。心配な親子には、できるだけ大勢の参加者がいる模試を受けるように勧めているんです」

と奥野は言い、ブランド校に固執した結果、ひとつも合格を取れず、公立に通わせることになった蘭さん(仮名・以下同)の話を始めた。

蘭さんの娘、ルナちゃんは模試では常にトップクラス。見た目は女の子らしい清楚(せいそ)さと利発さを感じさせる。3月生まれでも成績優秀だったことが、蘭さんの自信を深めさせた。

「ところが、お母さまは教室の外で待っていてほしいと私がお願いすると、「そばで見せてほしい」とゴネるなど、子供を突き放せない弱さがありました。ルナちゃんにも、母親依存っぽい、線の細さがあるような気がしたのです」

蘭さんは、当時通っていた幼児教室の先生から「第1志望の青山学院の合格は絶対大丈夫ですよ」と太鼓判を押されていた。タレントの山口もえ似で、口調ものんびりした専業主婦ママは、塾の高い評価にすっかり舞い上がってしまった。受験校は、私立の名門・青山学院と国立の名門・筑波大附属に絞っていた。

「青山学院はミッション系の私立共学校で、筑波大附属は国立の共学校、校風が全然違う学校ですから、この2校しか受けないのは、併願プランとしておかしい。幼児教室の側は優秀な子を人気校、有名校に合格させて、合格実績を稼げればいいわけです。受験生本位の併願プランを提案してくれるとは限りません。それ自体はある意味しかたがないことですが、母親が企業の戦略に惑わされるのはよくないこと。親が主体となって、子供の性格や資質を第一に考え、滑り止めもふくめて適切な併願校を選ぶのが小学校受験の基本戦略です」