「笑いを提供する者は目には見えないものの、集団に確かな貢献をしています。当然、周囲の評価も高まる。だから集団内での優位性も揺るぎのないものになるのです」(石川教授)

特に笑いのスキルを持つ者が評価を受けやすいのが女性の多い職場だと石川教授は語る。それは女性のほうが、共感能力が高いためだ。

「狩猟採集の時代、男性が遠くまで狩猟に出かけたのに対して、女性は居住地に残って育児をしたり、周辺で採集を行ったりと、分担がなされていました。女性のほうが多くの人々と交流する必要性が高く、共感能力が、女性の“生き残り”に大きく影響しました」(石川教授)

女性がフラットな人間関係を志向する一方、かつて狩猟を受け持った男性はどちらかといえば、競争的で上下関係を形成しやすい傾向がある。ヒエラルキーの世界に窮屈な思いをする半面、上下のつながりに妙な安心感を覚える人も多いだろう。

しかし、例えば男性ばかりの会議では、権力ある人物の意見に全メンバーが迎合してしまうことがしばしば起きる。それは、連携ではなく上下関係の空気が支配しているから。男性が牛耳り、笑いやユーモアを軽んじるような集団では、「今後は共感的な女性が活躍できないばかりか、有能な若手の男性までもが働く意欲を失ってしまう可能性がある」と、石川教授は語る。

では、どうやって組織にユーモアをもたらせばいいのか。

「笑いのとり方には、いじることといじられることの2つがある」

そう話すのは、放送作家で、ベストセラー『いじり・いじられ術』の著者・田中イデア氏である。「歴史上の人物で言えば、いじられ上手の典型は豊臣秀吉」だという。

農民の家に生まれながら、大出世を果たし天下を取った戦国武将。社会の最底辺から頂点へとのぼりつめる過程では、人の心を掴む天才とされる秀吉の「人たらし」術がいかんなく発揮されていたといわれる。