10キロ1時間ランニング中に聴講
上越新幹線の燕三条駅から車で約20分、雪の積もる越後平野を走るとトクニ工業の本社・工場があった。
新潟県下有数の工業地帯である燕市に立地し、工場内では店舗什器やディスプレー台などの精密板金加工が行われている。社員数は20名。
「1980年代は、ここで鍋やフライパンをつくっていたんですよ」
同社の中島隆徳社長は語る。海外に流れてしまうような、日用品を大量につくる仕事から脱却し、デザイン性や複雑性の高い特注品などの受注生産を中心としたビジネスへの変身を遂げたのである。
72年生まれの中島社長は、04年に創業者である父から事業承継した2代目経営者である。これまで経営の勉強は独学で行っており、大前経営塾には40歳を迎えるにあたり、学びの節目として受講を決めた。
「ものづくりのスキルは反復練習で磨かれますが、経営者になるために免許はいりませんし、具体的な学習カリキュラムがあるわけでもありません。経営者は知的アンテナを張り、物事の見方や社会の捉え方、時代の変化に対する自分なりの考え方を整える『知的筋トレ』のやり方を身につけ、継続していくことが大事だと思います」
ランニングが趣味の中島社長は講義をiPodにダウンロードし、走りながら聞いている。1回のペースは10キロメートルを1時間なので、1回ランニングに出るとちょうど1本の講義を聞き終えることができる。毎月走る距離は100キロメートルなので、月に10本の講義を聞ける計算だ。