「最近ですとピジョンやジュピターテレコムが題材になったのですが、今まさに世の中で起きている出来事をベースに実在する会社の将来を経営者目線で考える。最初はその会社がどんな会社で、どんな経営課題を持っているかを把握するだけでも時間がかかり大変でしたが、こういう講座がなかったら興味を持たなかった企業がいっぱいあったと思います」
夢中で学習を続けるうち、身についてきたのが経営者視点である。中山部長が担当する部門の従業員は派遣、請負も含め1000名を超える。雇用を維持する責任は重いが、一方で会社全体に視点を移すと生産の70%が国内なのに対し、売り上げは海外が85%を占める。
「私の立場では工場をどう運営し雇用を確保するかが目的に近くなるのですが、経営者の立場になるとどこで何をつくるのかは手段の1つです。国内の雇用に貢献したいという思いは堅持しつつも、目線を上げ、為替リスクや生産コスト、顧客に近付くことなどを考慮すると、一定の海外生産比率向上に取り組む必要があると考えるべきことがわかります」
ビジネスパーソンが学習する場というと、MBAのように会計やマーケティングといったスキルを学ぶところが多いが、経営者は広く世界の動向を認識したうえで、自社の方向性を指し示さなければならない。そうしたトレーニングを行っているのが大前経営塾といえよう。
「この経営塾の特徴は、国家戦略や政治動向まで踏まえたうえで、企業はどう動くべきかといった目線の高い話が多いんです。企業活動は当然、国家戦略のなかに巻き込まれているわけで、それを考えたうえで今度は目線を戻し、自分たちの事業や業界をどうすればいいのかと考える。そうしたダイナミックな思考力が鍛えられます」
1962年、石川県出身。金沢大学工学部機械工学科卒業後、85年同社入社。2007年生産技術部門長。11年より現職。