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ヤマトグループの「入れ子状組織」

それをプラットフォームとして提供し、同業他社をも取り込んで、競争を共創へと変える。顧客自身も、困りごとが解決されると、プラットフォームの価値が高まるという意味で、顧客とも共創の関係が結ばれる。木川もそんな構図を描く。

「協業により、幅広いプレーヤーがプラスアルファの価値や機能を加えていくほど、プラットフォームは強固になり、永続的に使われるものになるのです」

ネット通販世界最大手のアマゾンは、他社にプラットフォームを開放し、ワンストップ・ショッピングを可能にした。顧客レビューによりサイトの価値が高まる仕かけにより、顧客とも共創する。結果、アマゾンを中心に多様な当事者が結びつく1つの生態系(エコシステム)が生まれる。市場が激変する不確実な時代、自らの生態系を持つ企業は強い。それを物流の世界で目指すのがヤマトだ。

「DAN-TOTSU経営計画2019」は「アジア・ナンバーワンの流通・生活支援ソリューションプロバイダー」の近未来像を描く。それが実現するとき、ラストワンマイルのネットワークを中心に、行政までも取り込む生態系が生まれる。そして、現場で困りごとをフッキングし、顧客との共創を積み上げる全員経営がそれを下支えする。「学ぶべきことはすべてヤマトにある」と気づくとき、21世紀の最強組織のあり方が見えてくるのである。

(文中敬称略)

(鶴田孝介=撮影)
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