「一致か不一致か」という質問で30分近く会見が停滞

――進行上、問題視されたのはフリージャーナリストの横田増生さん(『ユニクロ帝国の光と影』の著者)が、中居正広氏とトラブルがあったという女性の間で認識が「一致しているか不一致なのか」、はっきりしろと経営陣に迫った場面でした。横田さんが声を荒らげ、20分以上にわたり答えを迫っても、遠藤龍之介副会長たちは「プライバシーに関わることなので答えられない」と明言を避けていましたが……。

【白戸】それについては経営陣の間に「答えない」というコンセンサスがあったのでしょう。ただ、報道の自由、言論の自由の原則がある以上、ジャーナリストによる質問自体を止めることはできないし、「被害者のプライバシーを侵害してでも報道するんだ」という判断も場合によってはあり得ます。

フジテレビの会見に詰めかけた記者、カメラマン
撮影=石塚雅人
新聞・テレビなどのマスコミからYouTuberまで、フジテレビの会見に詰めかけた大勢の記者たち

――週刊誌の不倫スクープなどがそれに該当するでしょうか。報道が優先される場合もあるということですね。

【白戸】記者会見について申し上げると、真相を究明したいのならば、会見での追及は極めて不効率な手法です。今回も名物記者と呼ばれる人たちが激しい調子で質問していましたが、会見を取材活動の中心に置いている記者がいるとしたら、それはジャーナリストの仕事を勘違いしていると思います。会見では相手が嘘をつく場合もありますし、いくらでも隠し事をして、都合の悪い情報を出さないこともできます。

また、人間には、機微に触れる話を大勢の前で話すことをためらう習性がある。したがって、最もしっかり真相を追及できるのは、警察の取り調べがそうであるように、一対一の取材であり、証拠の収集です。取材相手の言質を取る「インタビュー」だけでなく、情報提供者に対する水面下での地道な取材の積み重ねこそがジャーナリストに要求される最も重要な仕事です。会見は取材手法の一部に過ぎないことを、記者自身がもう一度自覚する必要があります。