会見が「ショーコンテンツ」化し、視聴率もアップという皮肉
――たしかに、会見の中継はショーとして楽しまれ、その時間帯の視聴率はフジテレビの前2週の放送に比べて2倍になりました。
【白戸】スポンサーの大半がCMを中止する中で皮肉な結果になりましたね。しばらくすれば、多くの国民は別の大きなニュースに夢中になり、フジテレビのことを忘れてしまうでしょうが、今回のような会見でも、フジテレビの組織改革は一定程度進むと思います。相談役の日枝久氏もおそらく辞めざるを得なくなるでしょう。
「ジャーナリズムとは何か」と説明できるか?
――今回の会見から学べること、考えるべきことはなんでしょうか。
【白戸】少なくとも2つの観点から考える必要があります。ひとつはここまで述べてきたように、日本における記者会見の位置付けについて再考してみること。もうひとつは「ジャーナリズムとは何か」についての社会的合意の形成が必要だということです。メディアとは単なる媒体であり、メディア=ジャーナリズムではありません。ジャーナリズムの原則をここで全て話すことは物理的に不可能ですが、ひとことで言えば、市民が自由で民主的な社会を形成するためのさまざまな判断を下す際に、判断材料となる情報を提供し続ける営みであり、この原則に様々な条件が付随しています。
恥ずかしい話ですが、私も新聞記者だった時は「ジャーナリズムとは何か」について、きちんと説明できないまま働いていた時期がありました。新聞社やテレビ局の経営者でも説明できない人がいるように思います。オンラインメディアも発達してきた今こそ、ジャーナリズムとは何かということを原点から考え、その上で、記者会見の設定と運営の仕方を、会見する側と出席するジャーナリストの双方が再構築するべきだと思います。