安定した関係を結ぶ「友人」がいることは、私たちが生きるうえで、大切な意味を持っている。私たち人間は、長い進化の過程で、社会的動物として生きてきた。「友人」との絆こそが、私たちの生の支えなのである。

猿が毛繕いをして仲間の絆を確認するように、人間は会話で友情を確かめ合う。(写真=田中光常/AFLO)

猿の群れでは、「友人」同士が「毛繕い」をする。お互いに毛繕いをすることで、絆を確認し合うのである。

毛繕いをすると、脳内にβエンドルフィンが放出される。βエンドルフィンは、痛みを和らげたり、幸福感をもたらす作用を持つことが知られている。がん細胞の増殖が抑えられるとも言われる。

猿の群れでは、毛繕いをする個体同士は、何かトラブルがあったときに助け合う傾向があるという。毛繕いをする仲間を増やすことで、1つの「安全保障」になるのである。

人間の場合、毛繕いはしない。その代わりに、言葉をかわすように進化してきたという説がある。また、一緒に笑うことで、毛繕いをするのと同じように絆を深める効果を持つという考えもある。

社会的動物である人間にとって、友人を通してつくられるネットワークは、かけがえのない財産。時々会って、言葉をやりとりし、楽しい時間を過ごすことで、人間にとっての「毛繕い」が行われる。そのようにして安定した関係を築くことが、仕事のうえでも生活のうえでも大切なことは言うまでもないだろう。

猿たちは、自由な時間のかなりの部分をお互いの毛繕いに費やしているという。猿に比べれば、さらに複雑に発達した社会構造を持つ人間。多くの時間を人間にとっての毛繕い=会話に費やすことは、当然の行動と言える。

友人関係を保つことは、時に面倒臭い。だからこそ、脳を使う意味がある。頭のいい人とは、毛繕いの仕方のうまい人。「ダンバー数」の上限を使い切るくらい、友人関係を充実させてみてはどうか?

(写真=田中光常/AFLO)
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