隠しごとはせず、本当のことを話す

アッシュ社長 
杉野 正氏

僕は「うそつき」ではなく、「ほんとつき」なんです。本当のことを言ってしまう性格ですから、しなの鉄道を再建するときも、埼玉高速鉄道を再建するときも、社長として乗り込んでいったとき、社員に隠しごとをしないし、本当のことしかいわなかった。

しなの鉄道の社長に就任してすぐに、社員には「赤字を出す会社であれば、潰れたほうがいい」といいました。運営費のほとんどを長野県と沿線の自治体からの税金で賄っている会社です。その会社が赤字ということは、血税を垂れ流し、ドブに捨てているようなものです。このままなら、会社を潰して、社員はみんなハローワークに行ったほうがいいと伝えました。

だから、正直な話、社員には嫌われていたと思います。特に、改革に後ろ向きの社員を相手にするときは、社員が見ている前で、「辞めてもらいたい」という気迫で怒りました。なぜ、みんなの前で怒るかといえば、どちらのいっていることのほうが正しいか、社員にわかってほしいからです。

しなの鉄道のときには、社内に「打倒JR」「打倒、県企画局」などのビラも貼りました。目に見える形で、自分の意思を浸透させるためです。僕は自分の言葉にコミットしているから、目標を曖昧にせず、目的もしっかりと書いて貼っておく。口頭ならば、いいっぱなしになりますから。その分大きなプレッシャーですけどね。

会社再建で大変だったのは、コストダウンです。契約書を見ても、明らかに不平等で不利な契約になっている。しなの鉄道では、JR東日本の都合のいいように、契約が結ばれている。埼玉高速鉄道では、東京メトロの都合のいいように契約が結ばれている。しかし、社員はそういう不平等契約が身に染みついているから、どうコストダウンしたらいいかわからない。

だから、たとえば、キヨスクとの交渉や、車内広告の交渉など、大きな契約更改の交渉は、すべて、僕自身がしました。身をもって範を示すことで、できないことはないんだと、社員に示すわけです。