僕みたいに、「黒船」のようにやってきて、今までのやり方を根底から変えるためには、「結果」を出すしかありません。結果を出せば、社員も認めざるをえなくなる。好かれるかどうは別にして、認めざるをえないところまで結果を出せば、社員たちも僕に従わざるをえなくなります。

しなの鉄道の経営再建では、3割のコストダウンを打ち出しました。この3割は、今までのやり方では絶対達成できない数字です。つまり今までどおりの仕事をしていてはダメで、仕組みや方法を大きく変えないといけない。

一方で、コストダウンだけをやっていれば、会社の活気は次第に失われていきます。それよりも、面白い企画を考えて、増収を目指したほうがいい。しなの鉄道では、ビール列車やワイン列車、あるいは芸者列車などさまざまな企画を考え出し、実現しました。

いろいろな企画の列車を走らせることで、乗客が目に見えるほど増えてきます。結果が出れば、人間、楽しくなってきます。すると、社員自身もどんどん企画を出すようになる。そうなれば、自然に会社全体が動き出すようになります。

さらに、毎日、誰かれ構わず、声をかけるようにしました。仕事のことだけではなく、今日何を食べたのか、などと声をかけます。僕は、社長室というのが嫌いで、僕も一人のプレーヤーだから、他のプレーヤーのコンディションがわからないと、いい仕事はできません。それに自分が出した指示の反応を見る必要もあります。

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杉野式「社員の心を掴む」5カ条

僕は、人の欠点を見ないようにしています。欠点をあげつらっても仕方がないからです。配置転換でも、社員の長所を褒めて、いいところを伸ばすために配置転換を考えます。それから、前向きの失敗ならば、決して怒りません。新しいことにチャレンジした失敗は、次につながる失敗だと思います。

実は、これまで僕は社員に好かれるかどうか気にしたことはありません。少なくとも、認めざるをえなくなるまで、自ら率先して結果を出すこと、長所を見つけ出して適材適所に配置すること、隠しごとをせず、本当のことを話すことで、案外、社員には好かれていたかもしれません。

アッシュ社長 杉野 正
1958年、神奈川県生まれ。神奈川大学経済学部卒。82年ユニ・チャーム入社。96年ヘッドハンティングされエイチ・アイ・エス入社。2002年、しなの鉄道社長。04年埼玉高速鉄道社長。現在、アッシュ社長。
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(構成=高馬卓史 撮影=鈴木直人)