優秀な人材をまかえなくなってきている

【西岡】正直にいえば、官僚になった先輩に話を聞いてみて「官僚なんていいことないよ」という評判を耳にする頻度は少なくないように思います。私自身が東大で受けた肌感覚としてもよく分かります。そして、東大生の就職先は、たとえば外資へとシフトしていっています。

具体的には外資コンサルや外銀。実は私の会社の「カルペ・ディエム」でも東大生を対象に調査したことがあるんです。「将来なりたい職業」は「外資20、決まっていない18、官僚15」。「就職の際に重視していること」は「やりがい32、働き方23、大きなことができるかどうか20、年収20」。

【宇佐美】西岡さんのデータにみえるような「外資」に行った人たちが、30代くらいになって心変わりする可能性はある。「真面目に勉強すればこの国を動かせるんだ、そういう風に世の中はできているんだ」と心に深く刷り込まれているから、30代半ばから後半ぐらいになって、なんとなく「お国のために」モードに変わるようなケースも目にはします。

しかしそういった人たちだけで、「もうこのシステムではやっていけない」と思って辞めてしまった人の欠員を埋められるか。もはや法律の条文を書く、税率をいじる。そういった「官僚にしかできない仕事」への職能人気だけでは、必要最低限の法学的知識を備えた人材すらまかなえなくなるかもしれません。

慶應より官僚を輩出している意外な地方大学

【じゅそうけん】私がSNSで観測したりしているアラサー世代の東大出身者だと、まだお金を稼いで「ウェイ!」という人が多い。だけど彼らはまだ20代後半。彼らもあと5、6年したらそう変わってくる可能性がある。それくらい官僚養成学校としての東大生のマインドは根底的で、根強い。しかし、その根強さがどこまで通用するのか。

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東大生の官僚離れの結果、たとえば岡山大学出身者の割合などが中央官庁でも増えてきています。岡山大学は、官僚の出身大学ランキングで、すでに慶應より上位にいます。トップテンには以前からずっと入っている。

東大ばかりが目立ちますが、実は昔から官僚を輩出する地方大学という伝統もある。その伝統の存在感が増してくるならば、東大生が官僚離れをしても、なんとかなるという面はありませんか?

【宇佐美】岡山大学には元々官僚を出す風土がありますよね。岡山大学は、経済産業省の事務次官も輩出しています。無論、地方ならばまだ官僚ブランドが効くという事情はあります。

とはいえ「官僚」ももはや「普通の進路」の一つになりつつあり、総合職(旧I種)と一般職(旧II種)の温度感の違いも薄らいできているのではないでしょうか。

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