「自転車は歩行者の仲間」という大間違い
この「歩行者にもヘルメット」という考え方は、案外危険な話で、次のように使われたりもする。
「チャリンコにヘルメットなんて要るか? だったら、歩行者だって必要ってことになるじゃないか」
で、その人は結局それを言い訳にして自転車に乗る際にヘルメットをかぶらない。これに近いことを考えてる人も案外いそうだと、私は思っているんだが、こういう人たちが、圧倒的に誤解しているのは「自転車は歩行者の仲間」だと思い込んでいることだ。
まずそこが違う。自転車はスピードが出るのだ。ママチャリであっても歩行者の3倍や4倍の速度が普通に出る。歩行者が約4km/hだから、そういう勘定になる。いや、それ以上だって楽々だ。
3倍? 4倍? その数値も実は甘いのだ。衝突時の運動エネルギーというものは質量×速度の二乗に比例するので、自転車の衝突エネルギーは、歩行者の9倍から16倍になるのである。
ここに自転車分の重量増が加わってくる。これは単純な物理の法則であって、ここに抗える人は誰もいない。
死亡率の境界線「時速30km」
そしてもうひとつ、事故のダメージは「相対速度」で決まることだ。
ママチャリレベルの15km/h前後で、何かの移動体と衝突した際(ママチャリ同士であっても)、相対速度は十分30km/hに届く。
そして、その30km/hこそが有名な「死亡率が急騰する速度」なわけだ。歩行者とはここが違う。
ヘルメットをかぶるのは確かにちょっと面倒くさい。特に女性にとっては、髪型がつぶれてしまうので避けたい気持ちも理解できる。でも、今回の息子の事故で明らかになったように、命を守ってくれる。
そのデメリットとメリットを天秤にかけて、バランスがとれるのはどこだろうというのが、かぶるかぶらないの基準ラインとなってくるのだと思う。