「買いたくても欲しい車がない」日産ファンの声
日産はゴーン時代にEVに特化する戦略を採り、HVの開発には力を入れてこなかった。本格的なEV時代が到来し、HVは環境規制から普及しないという読みだったが、日産の主力市場のひとつである米国で、予想外にHV人気が盛り上がっている。車体価格がEVに比べて安いことや、ガソリン代など運用コストが低いことがHV人気に拍車をかけている。トランプ大統領になって環境規制が強化されないとの見方も、HV人気を後押ししている。
中国は国家戦略としてEVへのシフトを一気に進めているが、中国メーカーがEV生産を拡大しており、日産が中国市場で中国メーカーに勝つ構図は見えてこない。
日産の販売は日本国内でも苦戦している。「買いたくても欲しい車がない」という声が日産ファンからも出るほど、ヒットした車がほとんどない。新型コロナウイルスの蔓延が終息した2022年以降、半導体不足から自動車の供給が滞り、購入を待つ予約が膨らんだため、日産も2023年3月期、2024年3月期は売上高、利益とも、大幅に改善した。ここへきて各社の供給体制が整ってきたこともあり、「車種の強み」が販売に響くようになってきた。
トランプ大統領の就任でメキシコ工場からの輸出に影響
こうした販売の落ち込みに対して、日産は世界生産の20%削減を打ち出した。2024年4~9月の半年ではすでに生産調整を開始、米国での生産台数は15.5%減少、日本の生産も13.4%減った。景気が悪化している欧州でも、英国での生産が7.5%減っている。今後、どのマーケットの生産を削減していくことになるのか、大いに注目される。
というのも、上半期の生産台数で最も多かったメキシコの行方が注目されるからだ。上半期は日本と米国が生産を大きく減らして、日本30万7000台、米国25万4000台となったが、メキシコは12.8%増えて33万5000台を生産している。その多くが米国市場に輸出されている。
米国は景気の好調が持続しているものの、自動車市場には大きな変化が予想される。トランプ大統領の就任で、メキシコからの輸入に高率の関税を課すことが予想されていて、日産のメキシコ工場からの輸出も大きな影響を受ける可能性が高い。米国工場に生産が移れば移ったで、コストが上昇するのは目に見えていて、しかも米国市場での人気車種がないとなれば、さらに収益が悪化する懸念があるからだ。