競争が激化する中で、世界戦略が描けずにいる

日産自動車が苦境に陥っている。ここ半年の業績が大幅に悪化、対応策として世界で生産能力を20%削減し、9000人の人員削減を行うと発表した。強力なリーダーシップで日産を牽引してきたカルロス・ゴーン元CEO(最高経営責任者)が突然退場して6年。懸案だった仏ルノーからの「自立」は実現したものの、競争が激化する中での世界戦略が描けずにいる。さらには、米国でドナルド・トランプ氏の大統領復帰が決まり、主力工場であるメキシコからの米国への輸出にも暗雲が漂う。果たして日産は復活を遂げることができるのか。

日産自動車日産NISSANの看板、ロゴ。=2024年9月30日
写真提供=日刊工業新聞/共同通信イメージズ
日産自動車日産NISSANの看板、ロゴ。=2024年9月30日

11月に発表した2024年4~9月の半期決算には衝撃が走った。連結売上高は5兆9842億円と前年同期比1.3%の減少にとどまったが、本業の儲けである営業利益は329億円と前年同期の10分の1に減少、純利益は192億円と何と93.5%も落ち込んだのだ。表面的には何とか黒字を維持した格好だが、自動車事業の営業損益は1430億円の赤字になった。本業から上がってくる現金である「営業キャッシュフロー」も昨年上期の3727億円の黒字から一気に悪化、2340億円の赤字になった。

米国で盛り上がるHV人気

背景には深刻な販売不振があるとみられる。小売りベースの販売台数は159万5884台と1.6%の減少に留まっている。他の自動車メーカーとの競争で比べられる台数はこれで、日本や北米の落ち込みを欧州やその他地域での販売で補ったとしている。ちなみに日本国内は2.4%減少、米国は2.7%減少、アジアは6.7%減少だ。

だが、日産グループ間や業者向け販売などを示す連結売上高ベースの販売台数は126万5242台と5.2%減少、日本国内は9.9%減、米国は5.2%減、アジアは18.4%減となっている。

決算書では、米国市場での「市場占有率は前年同水準の5.7%」とされているが、販売台数を維持するために、ディーラーなどに支給する販売奨励金(インセンティブ)などを積み増したとみられ、これが大幅な利益の悪化に結びついていると見られる。

ここへきて米国では、電気自動車(EV)の人気が一服し、ハイブリッド車(HV)人気が盛り上がっている。日産はHVのラインナップを持っていないことから、積極的にHVのラインナップを揃えた他社の後塵を拝する結果になっている。米国市場でのHVのけん引役であるトヨタは、米国で販売するガソリン車のほぼ全車種のHV版をそろえている。