当時、田中は顧客の要求に応じるために、ある社内部門との調整が必要だった。ところが調整に手間取り、両者の板挟みになって苦しんでいた。
「相沢さんは私より社内に人脈があるので『それなら○○さんに聞いてみよう』とどんどんつないでくださって、『田中さんはこうすればいいから』とやり方を全部教えてくれたのでとても楽になりました」(田中)
その結果、田中はこの顧客の獲得に成功した。
相沢のリーダーシップのあり方には、支援型の要素が強く感じられ、ふだんのコミュニケーションの中にもそれを見ることができる。第4グループでは朝礼以外、定期的な会議を極力持たない。営業目標の共有と進捗管理は週に1回、1対1で1人30分をかけて行う。進捗が滞っていれば一緒に原因を探り改善策を考える。
加えて、相沢は客先から帰ってきた部下の顔色を見たうえで「おもしろおかしくいじっている」(加藤)。
「営業ですから、外から帰ってきたときの顔色を見ればだいたいどんなことがあったのかわかります。ニコニコしていれば『何かいいことあったのか?』と聞く。悪いことがあった人はぼそっと挨拶をして席に座ってしまうので、自分から近づいて『何暗い顔しているんだ』などと声をかけます。問題があればすぐ話してもらって一緒に解決し、早く次に進んでほしい。それに我々のメーンの仕事場はお客様先です。社に戻ったときはリラックスしてほしい。その中で営業同士も情報交換をしてくれたらいい」(相沢)
いじられる部下の側はどう感じているのだろうか。吉本弘治はこう言う。
「『何やってるんだよ』というときでも、相沢さんのは優しい、温かいいじり方なんです」(吉本)
相沢自身、穏やかな笑顔を絶やさない。これは意識してやっているという。
「過去に、一生懸命になるあまりしかめっ面をして仕事をしている時期があったんです。そうしたら当時の上司から『おまえはもともと顔が怖いんだから、それじゃ周りも声をかけづらいよ』と注意されまして(笑)。で、いまはメンバーが声をかけやすいように極力ニコニコしています」(相沢)